第一章

 きっと彼女自身、本気でここまでやるとは思っていなかったのかもしれない。


「瑠璃、あんたよく思いつくよね、そういうくっだらない遊び。見てて毎回呆れてくるわ」


 いつの間のにかすぐ近くまで歩いてきていた小塚先輩が、無関心な瞳を天音に向けて口を開く。


「なによぉう、そう言っていつも黙って最後まで見てるくせに。静鶴だって同罪よ。共犯者なんだからね」


「……迷惑な話」


 ちょいと肩を竦めて、小塚先輩は息をつく。


「んで? こっからどーすんだよ。お前これがやりたくてここに来たんだろ? まだ何かするつもりか?」


「ん~? 別に。これ以上何かやって、万が一ばれたらヤバイしね。今日はこれくらいで勘弁してあげる」


 彼氏の問いかけに答えて、瑠璃先輩はこちらへとステップを踏むような足取りで近づいてくる。


「珠美、天音の後処理お願いね。あたしたちは先に車戻るからさ、あれちゃんと連れてきて。あ、でもあんまりもたもたしないように。そういうときは置いて帰るから」

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