第22話
そんなこんなで藤井さんと二人で駅の近くまでやってきた。先ほどまで通っていた住宅街とは違ってこんな朝でもやはり人通りは多い。
「えーっと、上野さんは……」
いた。さすがに今回はジャージではないようだ。なんていうんだろうか、こう、ちゃんと余所行きの格好って感じだ。
「おはよう、上野さん。今日は普通の格好なんだね」
「……お、おはよう」
おや、なんだかいつもと違うご様子。
「おはよう! 上野さん!」
あ~この人いたんだった。それなら上野さんのこの感じはむしろ普通なのか?
それにしてもここまで露骨にコミュ障っぽいとは思わなかったな。これなら周りにもコミュ障って知れててもおかしくないはずなんだけど。
「それにしても上野さんって喋るとこんな風だったっけ? なんかイメージと違う気がするんだけど」
やはり藤井さんは疑問に思ったらしい。そういえば上野さん曰く、緊張しすぎて無表情になる。とのことだったのでもしかしたら今は緊張がマックスになっていないということなのか。これはコミュ障が少しは改善されているとみてもいいのかな。
「えっとその、もともとこんな感じっていうか……」
「そうなの? 聞いてた話とも教室での印象とも違うような気がするんだけどなぁ」
さすが空気を読むことに長けていそうな藤井さんだ。そこはかとない聞かないでオーラを感じ取ったのかスッと引いた。
その場でとどまっているわけにもいかないし間が持たないので、俺たちはひとまず俊之の家に向かって歩き出した。
「そういえば溝部君、さっき上野さんの服装を見て今日は普通って言ってなかった?女の子に対してそれは失礼なんじゃないのかな」
藤井さんが上野さんには聞こえにくいように言ってきた。言われてみれば確かに失礼だとは思うが、前はジャージだったからな。こんな風に行ってしまうのもしょうがないと思う。
「しかも今日はってことは前にも一緒に遊んだりしたってことよね?」
「いや、それはその」
「溝部君って、実は案外手が早かったり?」
「だからそういうわけじゃないって!」
「ムキになるところがちょっと怪しかったり」
このまま反論し続けても意味はなさそうだな……。
予定通りコンビニによって上野さんが昼食を買うので、俺はついでに俊之の家に持っていくお菓子を選ぶことにした。藤井さんも何やら買っていくそうなので三人がそれぞれ別の売り場に歩いていく。
男ばかりで集まるときはいっつもスナック菓子ばかり買っていくけれど、ここはやはり甘いものも買っていくべきだろう。女子が好みそうなお菓子、うん。全然わからん。まあお徳用みたいなの買っとけばはずれはないだろう。
お菓子も適当に選んだし、さっさと買って店の外で二人を待とう。
「おまたせ~溝部君、ちょっと待たせちゃったかな?」
「……おまたせ」
俺が店を出てから少し時間を空けて二人はそろって出てきた。二人ともお弁当を買ったのか、少し大きめの袋を持っている。
「お弁当選ぶのに時間かかったの?」
最近のコンビニ弁当はすごいからな。俺もたまに買うことはあるがいろんな種類があるし量もなかなか、選ぶのには時間がかかるのも当然だろう。
「ま、まあそんなところよ……」
上野さんが少し狼狽えたように答える。お弁当を選ぶのに真剣になったことが恥ずかしかったのだろうか。
「よし! それじゃあ渡会君の家に向かいましょうか!」
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