第20話

『まあそういうわけで俺と上野さん、俊之に藤井さんが今回のメンバーだよ』

 その日の夜、早速SNSアプリをインストールしたという連絡をしてきた上野さんに昼間のことについて報告ををしていた。

『なんか、思ってたよりも少なくて安心しました。』

 していたのだけれども、なぜか丁寧語である。

『藤井さんが言ってたんだけど

 上野さんと仲良くなれるかもって』

『それはうれしいですね。こちらもなるべくしっかり話せるように頑張らなければいけませんね。当日は気合を入れていきます。』

 気合を入れるとなると二回目にあの場所であった時のような感じになるのだろうか。なんだかそれは逆効果になりかねないと思うんだが......。

『あんまり張り切らないほうがいいんじゃないかな

 コミュ障特有の変なテンションになるんじゃない?』

『確かに一理ありますね。溝部君みたいに気が動転して相手に対して恥ずかしい言葉をその一時のテンションでスラスラ言ってしまうようなことにはならないと思いますが。』

 ここぞとばかりに心の傷をえぐられてしまった。ちょっと怒ったぞ。

『そっちだって二回目にあったときには

 こちらの話を聞こうともせず一方的に話してたじゃないか

 それになんか敬語なのもキモい』

『キモいってなんですかキモいって。私からすればいちいち改行して話し言葉を打ち込んでる方がなんだか気持ち悪いのですが、他の人たちもそんな風に使っているんですか?』

 今まで使ったことないとは言っていたがそんな風に思っていたのか。彼女は手紙のような感覚で今メッセージ打ち込んできているのだろうか。妙なところでやっぱりあれだな。

『おばあちゃんかな?』

『怒りますよ?』

 2秒で返ってきた。怖い。

『ごめんごめん

 でも、今時そんな風に送ってくる人なんて電子メールでもいないと思うよ

 このアプリだって簡単にやり取りできるから流行ってるわけだし』

『そういうものですか。まあ少しずつ慣れていきます。』

 全然わかってなさそう。

『ええっと

 こんな感じでいいのかしら?

 なんかやっぱり変な感じね

 こんなのに慣れたら社会に出た時苦労しそうだわ』

 前言撤回。意外に慣れるの早いじゃないか。

『そうそうそんな感じ

 でも社会に出た時に苦労するのはそこじゃない』

 俺たちが一番苦労しそうなのは今のところコミュ障であることだろう。

『?』

 わかっていない様子だがあえて言う必要もないな。

『なんでもないよ

 まあともかくそういうことなんでおやすみ~』

『ええ、おやすみなさい』


 それにしてもなんというか、相手は上野さんとはいえ女子と寝る前に連絡取りあうってのは初めての経験な気がする。それどころか着々と俺の初めては彼女に奪われていってる気がするのは気のせいではない。

 まあこんなのは普通の男子高校生ならやっていることなんだろう。それも下心で。

 今までの俺が何もなさ過ぎたのだ。女子の友達と呼べる人がゼロだった時点で、自分を普通だと思っていたあの頃の俺をぶん殴りたくなってくる。

 そもそも俺が女子を無意識のうちに苦手に思っていたのはいつからだったろうか。自分でも思い出すことができない。きっと理由なんてないのだろう。何か劇的な事件があったわけでもなし、ましてやトラウマの類なんてもってのほかだ。ただなんとなく昔から男子とだけ遊んでいたのだ。そして大きくなってから、女子を相手にしてこないまま、思春期を迎え半端な知識や性欲を持ち今に至る。

 下世話な話だが俺にだってそういう劣情はもちろんあるし、女性というものが大好きではある。だけど今まで話をしてこなかった女子たちに苦手な意識があったのは多分こうしたものとのギャップが関係してるのではないかと今は思う。欲求としての対象と人間として、話し相手としての女性とがうまく分けられていなかったというか、言葉にするとよくわからなくなってくるがきっとそれだけのことなんだろう。

 だが、今の俺は上野さんと友達になれた。普通に接することができていると思う。きっかけは少し変だったけれども、きっとこのことは自信をもっていいことだ。

 もちろん性格が合わなければどうしようもないし、自分の中の苦手意識が完全に払拭できていないことは藤井さんとの会話でもわかっていることだ。だけど確実に、少しでも変わってきている。

 そして俺は彼女に感謝すべきだろう。変わるきっかけを与えてくれたことに、俺なんかと友達になってくれたことに、ともにコミュ障を脱却すると言ってくれたことに。

 共に頑張るといった彼女、上野朱里は俺の中ではもう、特別な一人なのだから。

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