第12話 巧、考察の後と動揺

「よし、じゃあ帰るか。沙織、帰りもお前が前だろ?」

「うん、ゴンザレスが落ちたら宜しく」

「ああ」

「酷いよ、沙織ちゃん。ちゃんと掴まってるって」


 ちょっとしたアクシデントはあったが、そんな事を言い合ってから無事にプールを出て、二人で前後になって道路を走り始めた。

 日が長いから本当はもう少し泳ぎたかったが、母さん達が五月蠅いしな、などと呑気に考えながら自転車を走らせていると、突然鋭い制止の声が響く。


「巧! 止まれっ!!」

「え?」


 条件反射でブレーキをかけ、道路に左足を付いて停止した俺の目の前で、信じられない光景が展開された。


「沙織!!」


 右斜め後方から突っ込んできたと思われるワゴン車が、俺の横五十センチの距離をかなりのスピードで通り過ぎて行った。

 俺があのまま走っていたら、斜めに突っ込んできたあの車に、間違い無く直撃されただろう。そしてゴンザレスの叫びに「何?」と言う感じで自転車を止めて振り向いた沙織の姿が、ワゴン車に遮られて見えなくなる。

 そして次の瞬間、歩道に乗り上げてそのまま斜めに突進した車は、並んでいる店舗のショーウインドーに突っ込んで漸く止まった。


「きゃあぁぁっ!!」

「おい、事故だぞ!」

「大丈夫か!?」

「警察に連絡を!」

「救急車も呼ばないと!」


 派手な衝突音の次にあちこちから悲鳴が上がったが、そんな事はどうでも良かった。


「沙織!! 大丈夫か!?」


 多分直撃は避けられたと思うが、車の右前方に接触して自転車ごと弾き飛ばされたらしい沙織が、歩道に仰向けに転がっていた。慌てて自転車を放り出して駆け寄り、自分でも情けない位動揺した声で呼びかける。


「っ、い、いたいようっ……」

「沙織!!」


 身動きしないまま涙目で訴えてきた沙織を、慌てて抱き起こそうとして、背後から伸びてきた手に肩を強く掴まれた。


「君、落ち着いて。どんな症状か分からないうちは、素人が不用意に触ったり動かしては駄目だ。この子の友達かい?」

「はい」


 不思議とその白髪交じりの男の人の言葉は、すんなりと頭に入ってきた。その意志の強そうで聡明な瞳に、一瞬、この場が修羅場だと言う事も忘れる。


「さっき通報したから、もうすぐ救急車が来る。この子の家族に、この子が事故に遭った事を連絡してくれないか。搬送先が分かったらそれも連絡すれば、家族が直接病院に行けるだろう? 他にも何人も怪我人がいるから、ご家族が消防署や警察に問い合わせをしても、情報が錯綜するかもしれないから」

「はい。分かりました」


 漸く周りの様子に気が付き、確かに他に何人かが歩道に倒れているのを認めて、心底ゾッとした。中には明らかに出血している人もいたからだが、内心の動揺を何とか押さえ込んで、母さんの携帯に連絡する。


「母さん、菅原のおじさんとおばさんの連絡先、知ってるよな!?」

「巧? いきなり大声出して何よ。びっくりさせないで」

「いいから! すぐにおじさんたちに連絡してくれ! 帰り道で沙織が事故に巻き込まれて、自転車ごと車に跳ね飛ばされたんだ!」

「何ですって!? それで沙織ちゃんは?」

「身体を動かせないっぽいけど、取り敢えず意識はある。救急車での搬送先が分かったら、また連絡するから。取り敢えず一報だけ入れておいた方が良いかと思って」


 チラッと沙織の様子を見ると、さっきの男の人が慎重に沙織の手足を確認しながら、何やら話しかけている様だった。それに何となく安心していると、母さんが慌てて叫ぶ。


「分かったわ! すぐに連絡を取るから、搬送先が分かったら、もう一度連絡お願い!」

「分かった!」


 そして通話を終わらせて、沙織達に再び目を向けた。


「痛い……。動かないよぅ……」

「大丈夫だよ、お嬢ちゃん。痛いって事は、神経がきちんと繋がってるって事だからね。吐き気とか、物の見え方がおかしい事は無いかい?」

「……うん」

「そうか。それなら大丈夫だな。骨は折れている様だが、若いしすぐに繋がるよ。安心しなさい」


 どうやら医者らしいその人に保証して貰って、俺は心の底から安堵した。

 そうこうしているうちに救急車が複数連なって到着し、俺は救急隊員の邪魔にならない様に、少し離れた所でその作業を見守っていた。すると隣で同様にそれを見ていたその人が、しみじみとした口調で話しかけてくる。


「君達は、どこかに出掛けた帰りだったのかい?」

「はい、プールに行って来ました」

「そうか。荷物を背負っていて良かったな。あれのおかげで、あの子は直接背中と腰を打ち付けずに済んだよ。脊髄を損傷したら大変だからね。ざっと診た感じ、運動機能を損なう様な事は無いだろう」

「ありがとうございます」


 沙織がストレッチャーに乗せられて、歩道に残されたリュックを目にしてから、俺が思わず頭を下げると、その人は苦笑した。


「いや、彼女の運の良さに尽きるよ」

「運?」

「今日はプールに行くのに、ぬいぐるみもリュックの中に入れていたみたいだし。それが車に弾き飛ばされた衝撃で押し出されたのか、偶々彼女の頭と首の位置に来ているなんて、凄い偶然だ。ヘルメット代わりにあれで保護する形になっていなかったら、とんでもない事になっていたよ」


 そう言って感心した様子でその人は一人で頷いていたが、その一部始終を見ていた俺は、思わず呟いた。


「偶然じゃ、ない……」

「え? 何か言ったかい?」

「いえ……、何でもありません」


 この場の誰にも信じて貰えないだろうから絶対に言わないが、車が突っ込んで来るのを見たゴンザレスは、俺を制止した直後、自力でリュックから抜け出していた。そして反転して沙織の後頭部にしがみついて、あいつの頭と首を守ったんだ。

 咄嗟にあんな事ができるなんて……。畜生、格好良いじゃないか……。俺なんか狼狽えまくってて、単なるガキだぞ。


 それから沙織が運び込まれた救急車の隊員に搬送先を聞いた俺は、母さん経由でおじさん達に連絡して貰い、漸く一息吐いた。そしてこの間、歩道に放置されていたゴンザレスに歩み寄り、屈んで他の人間には聞こえない様に囁く。


「……おい、ゴンザレス。悪かったな。もう、普通のぬいぐるみのふりをしなくて良いぞ。大丈夫か?」


 しかしゴンザレスはリュックの横で、さっきまでの沙織と同じ様に仰向けのままピクリともしなかった。それを見て、俺は生まれて初めて、血の気が下がるという感覚を実感した。


「おい、ゴンザレス……」


 咄嗟に掴んで持ち上げると、背中側が衝撃で擦り切れたのか裂けたのか、中に入っている筈の小さな白いプラスチックビーズがサラサラと歩道に零れ落ちた。それを見て固まっていると、横から困った様に声がかけられる。


「ちょっと、君! まだ現場検証が終わって無いから、外に出ていてくれるかな?」


 気が付くと歩道には立ち入り禁止のテープが張られ、一帯に人がいなくなっていた。

 それは分かったがゴンザレスをこのままにしておくわけにもいかず、制服姿の警官に訴える。


「すみません、俺は事故に遭った子の同行者です。このリュックとぬいぐるみはその子のなんで、俺が持ち帰って届けますから」

「それはちょっと待って。現場の物だから、一度こちらで預かるから。勿論、本人にきちんと返却するからね」

「でも!」

「それよりこっちで、事故の詳細を聞かせて貰いたいんだが」

「……分かりました」


 どのみち話はしないといけないだろうし、あっと言う間に鑑識らしき人達が周囲に集まってあれこれ作業を始めた為、邪魔する事もできずに近くに停めてあったパトカーまで移動した。


 ※※※


「こんばんは」

「いらっしゃい、巧君。事故の時は色々ありがとう」

「夜遅くに来て貰ってすまないね」

「いえ。同じマンションですし、大丈夫ですから」


 事故から二日後の夜。俺は呼ばれた為、沙織の家を訪ねた。

 正直、事故の後、どうやって家に帰って来たのかも曖昧だった。母さんにも随分心配されたが、問題無く登校もしていたし、支障は無い筈だ。


「それで沙織の具合は大丈夫ですか?」

「命に別状は無いよ。手術後に意識も戻って、はっきりしてるし」

「怪我の大部分は打撲だけど、歩道に投げ出された時に脚と腕を骨折してね。リハビリが必要になりそうなんだ」

「そうですか……」


 そうだろうとは思ってはいたが、はっきりと言われて幾らか気持ちが落ち着いた。だけどおじさん達が、わざわざ俺を呼んだ理由が薄々分かっていた為、あまり気分が晴れない。


「それで沙織は当初記憶が混乱してたし、麻酔とかで意識が朦朧としてたから聞かれなかったんだけど……」

「ゴンザレスの事ですね」

「ああ、そうだよ」


 おばさんが口ごもっているであろう内容を口にしてみると、おばさんは軽く目を見開き、おじさんが立ち上がって隣の和室から大きなジップロックを持ってきてテーブルに置いた。


「今日警察から、沙織の私物が返却されてね。これの事を、まだ言ってないんだ」


 零れたビーズが散らからない様にだろう。勿論警察の方でも、勝手に繕ったりする事はできないから、ジップロックで保管していたんだろうが……。

 お前、こんなに情けない姿になって……。ぺしゃんこのよれよれじゃないか。あんまり情けなくて、俺の方が涙が出てくるぞ……。


「それ……、事故の直後から、ゴンザレスは居ませんでした。声をかけても無反応でしたし。背中も衝撃で裂けたのか、その時点でもう中身が出てました」


 涙を堪えながらあの時の事を説明すると、おじさん達は揃って痛恨の表情になった。


「そうか……。おそらく、そうだろうとは思ったんだが」

「警察で放置されている間に何か有ったのかと思って、一応巧君に聞いてみたの。やっぱりゴンザレスは、事故のショックで抜けちゃったのね」

「あいつ……、カッコ良かったですよ……」

「巧君?」


 思わず、言葉が口を突いて出た。

 おじさん達が怪訝な顔をしたけど、構わずあの時の事を話し出す。

 偶々ゴンザレスが犠牲になったなんて、思って欲しく無くて。あいつが自分の意志で、咄嗟に最善の方法を選択して、それをきちんと実行した事を、二人にはちゃんと知ってて貰いたかったから。

 だってあいつは、ゴンザレスは、この家の家族の一員だったんだから。


 結果、普段クールなおばさんは、話している途中で号泣した。

 普段豪快なおじさんは、目頭を押さえただけで最後まで無言で俺の話を聞いてくれた。

 そして俺は話を締めくくると同時に、申し出た。


「これの事、俺から沙織に説明したら駄目ですか?」

「巧君」

「でも……」

「お願いします。そうさせて下さい」


 困惑顔を見合わせる二人に向かって、深々と頭を下げた。

 この役目だけは譲れない。直に見た俺が、絶対に伝えないといけない事だ。

 俺のその決意が伝わったのか、おじさんが静かな口調で言ってくる。


「分かった。君にお願いしても良いかい?」

「はい。それから話は変わりますが、ちょっと聞きたい事があるんですけど」

「何かな?」


 そして俺は今日母さんから聞いた内容について確認を入れてから、沙織にどう話をするかを、一晩かけて考え抜いた。


「あ、巧。来てくれたんだ」

「おう、思ったより元気そうだな」


 完全に徹夜したにも関わらず、その日一日中、俺の頭は冴え渡っていた。ついでに同じクラスの奴には「人を一人か二人殺ってそうな顔は止めろ」とか言われた。……失礼な奴だ。

 一応、病室に入る前に深呼吸をして、笑顔を心がける。


 うん、大丈夫だ。やれる。

 そうして病室に足を踏み入れると、片足と片腕をギプスで固定した沙織に、笑顔で出迎えられた。


「今回は災難だったな。夏休みの残りが吹っ飛んだし」

「本当よね!? でも夏休みの分、学校を休む期間が少なくなるって喜ぶべきなの?」

「お前は真面目だな」


 苦笑いしながらベッドの横にある椅子に腰掛け、リモコンでベッドを起こす沙織を見る。そして無意識に、持ってきたリュックを両手で抱えた。


「そう言えばあの事故で、もっと重傷者がいたみたいね。お医者さんが、これ位ですんで良かったって言ってたわ」

「ああ、事故の事は新聞にも載ったしな。死者が出なかったのが不思議な位だ」

「ところでゴンザレスはどうしてる? あの時、いきなり背中で叫ばれたから、びっくりしたわよ。車が突っ込んで来るのが見えたから、巧を止めたんでしょう? ちゃんとお礼は言った?」


 そっちから話題を出してきたか……。まあ、当然と言えば当然だな。

 ここで俺は腹を括って、リュックのファスナーを開けた。


「まだ礼は言ってない」


 リュックの中に手を突っ込みながらそう告げると、沙織は途端に顔をしかめた。


「えぇ? あんたがそんなに恩知らずな人間だとは思わなかったわ」

「実は、ここに持って来た」

「え? そうなの? それならそうと言いなさいよ。それじゃあ今ここで、あんたが嫌がろうが何だろうが、ゴンザレスにちゃんとお礼を……」


 普段の沙織なら、「連れて来た」ではなく「持って来た」と言った時点で、異常を感じそうなものだが、そのまま説教モードで話を続けた。しかし俺が取り出してベッドサイドに乗せたジップロックの中身を見て、沙織が口を閉ざす。


「沙織、ゴンザレスだ」


 そう言い聞かせると、沙織は呆然としながら、力なく言い返してきた。


「……何で、こんな物に入ってるのよ。窒息するでしょうが」

「死なない。生きてないから」

「何で!?」

「理由は分からないが、事故の直後から反応してないんだ」

「破れて壊れたから?」

「……衝撃のせいもあるかもな。それで抜けたとか」

「どういう事?」


 やっぱり沙織は、ゴンザレスが自分の後頭部と首を、身を挺して守った事を分かって無かったらしい。それで俺は、あの時見た事の一部始終を、沙織に全て語って聞かせた。

 最初険しい表情で俺の話を聞いていた沙織は、すぐに呆然とした表情になり、話し終えるまでに常には見ない勢いで、ぼろぼろと泣き出してしまった。


「ゴ、ゴンザレスっ……、あ、あたしのせいで、死んじゃったぁぁ――っ!!」


 俺の手からジップロックごと奴の抜け殻を奪い、沙織がそれを抱き締めながら病棟中に響き渡る位の大声で泣き喚いた。当然何事かと看護師さんが飛んで来たが、責任を持って泣き止ませるからと頭を下げて、何とか引き上げて貰う。

 寧ろ、話はここからが本番だからな。

 俺は軽く息を整えて、未だに「うわぁ――ん!」と泣き叫んでいる沙織に声をかけた。


「あのさ、沙織。話があるんだが」

「な、なによっ! ほっといてよ。巧の馬鹿ぁぁっ!!」

「事故の日に母さんがおじさん達に連絡取ろうとしたけど、おばさんになかなか電話が繋がらなかったんだって。どうしてだと思う?」

「そんなのっ……、知るわけ無いでしょ――っ!! 黙っててよ、馬鹿ぁっ!!」

「おばさんはその日、仕事を早退して受診してたから、病院内でマナーモードにしてて、着信に気付くのが遅れたんだ」


 そしてここで俺に八つ当たりして怒鳴りつけていた沙織が、涙を引っ込めて尋ね返してきた。


「受診……、って病院?」

「うん。産婦人科」

「は?」


 サクッと告げた内容に理解が追い付かなかったらしく、沙織はちょっと間抜けな顔で俺を凝視した。

 うん、こんな顔はレアだし、結構可愛いよな。泣き顔ってのも結構そそるものが……、って。こら、脱線するな、俺。正念場はこれからだ。

 そんな風に気合いを入れ直した俺は、ゆっくりと説明を続けた。


「その事を母さんに聞いたから、昨日おじさん達に確かめたんだ。そしたらその時の検査で、おばさんが妊娠してるのが分かったんだけど、事故の後バタバタしてまだお前に言って無かったそうだ。だから今日ついでに、知らせる様に頼まれた。お前、来年には姉ちゃんだぞ。前から弟か妹、欲しがってただろ? 良かったな」

「……えっと」


 前から弟か妹が欲しいと言っていたこいつだ。嬉しいとは思いつつも、ゴンザレスがいなくなったばかりで、どういう顔をすれば分からないと言った感じで戸惑っている。

 そこで、もう一押ししてみた。


「ところでさ、ゴンザレスって馬鹿で阿呆で抜けててどんくさかっただろ?」

「あんた、やっぱり喧嘩売ってるわよね!?」


 忽ち血相を変えて睨み付けてきた沙織に、思わず笑いが漏れる。

 まあ、怒るだけの元気があるなら、それほど心配要らないだろうな。


「だからうっかりフライングで早く来すぎて、入れ物が無いからって、そこら辺の物にうっかり入っちまったんじゃないのかなって思ったんだけどさ」

「…………え?」


 何が、とははっきり口にしないまま、俺はジップロックの中身を指差しながら口にすると、沙織は俺の苦笑いの顔とぺしゃんこの奴を交互に見ながら、表情を消して黙り込んだ。

 静まり返る室内。でもそれは俺からしたら、十分な反応だった。


「まあ、別によその家の事にまで、わざわざ口を出す気は無いからな。好きなだけメソメソしてて構わないぞ? お前が『頼りにならない不甲斐ない姉ちゃん』と、これから産まれてくる弟か妹に思われようが、俺には全然関係ないしな。じゃあ邪魔したな。リハビリ頑張れよ」

「…………」


 できるだけ淡々とした口調を心がけながら立ち上がり、後ろを振り返らずに病室を後にしたが、特に背後から声はかからなかった。

 変に宥めるよりも、あいつにはああいう言い方をした方が良いんじゃないかと考えたからだったが、いまいち自信が無い。もし沙織が余計に引きずる事になったら、おじさん達に謝ろう。

 本気でそう覚悟を決めていた俺の懸念は、……はっきり言って無用だった。


「あたしは! ゴンザレスの、強くて優しい賢くて頼れる姉になるのよっ!!」


 あの直後、沙織はおじさん達に向かって、それはそれは力強く宣言したらしい。そして宣言通り、鬼気迫る形相でリハビリを始めたとか。おじさん達には改めてお礼を言われたが、それから予想外の展開をみせた。


 それからの沙織は従来のクールさを封印したかの如く、それはそれは熱い女になった。周りからは事故で頭を強打したせいで、性格が変わったと言われた位に変貌した。

 強く優しく賢い姉を体現するべく、ひたすら努力する沙織の姿には、正直俺も少し引いた。


 そして更に、その後かなりの年月が経過してから、この時俺が迂闊に口にした台詞によって、自分の身に災難が降りかかるとは、この時点では全く予想できなかったのだった。

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