ベンチ

「……」

話が終わると、僕は思わず自分の足元に目をやってしまった。

しかし、次の瞬間に「しまった」と思った。

「怖がりだねえ。」

目線を上げると、ケケケとニヤけている先輩の顔あった。


辺りはすっかり暗くなって、僕らの座っているベンチも

建物の窓や街頭からの明かりでぼんやり浮かび上がって見える。

その闇夜に紛れケケケと響く声、浮かび上がるぐいと口角の上がった相手を小ばかにした表情。まあ、不気味。


「先輩、顔、こわいですよ。あと、毎回人をからかうために怪談話をするのやめてくれませんか」

「えー、やだー」


そう駄々っ子のように笑いながらはぐらかすと、

先輩は立ち上がってスタスタ歩きだした。

僕も座っていたベンチから立ち上がった。


歩き出した瞬間、

足元に何かぶつかった気がした。


…そちらに視線は向けず、気のせいだと思うことにした。

僕は急いで先輩を追いかけていった。

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