2.Sな彼女とNな彼

彼……西川紀樹にしかわのりきと出会ったのは


私が本社の企画部に配属された時。




『あおすけ』というキャラクターが好きで


製作している会社に入った。



新人の頃は店舗でグッズを販売したり


営業所で商品の管理をしたり


現場での仕事をしていた。



三年目には新しい商品開発から雑務まで


幅広い仕事をするようになった。



四年目には完全に何でもやらされて


本社で新しいキャラクター開発にも


携わってみないかと部長に声を掛けられた。




けれども


本社に来て最初に頼まれた仕事は


新入社員のガイダンスの司会だった。





その日。



普通の黒や紺のスーツだと


私まで新入社員に間違われるから


真っ白いワンピースのスーツで


慣れない高いヒールを履いていた。




まだ仲の良い人もいなくて


昼休みには一人でランチに出た。




雲一つない青空に太陽が眩しい。




食べ終えて時計を見ると


12時50分。




やばっ!




お店を探しながら歩いていたから


少し遠くまで来てしまっていた。




小走りで会社を目指す。




入口の前に着いた時


手に持っていた携帯が震えた。




きっと課長だ!




焦って電話に出ようとして


気を取られた瞬間、


地図を持った男の人にぶつかった。




ヒールでバランスを崩して


咄嗟にその人の腕につかまる。




「ごっ、ごめんなさい!」




体勢を整えて頭を下げた。




「俺の方こそ前見てへんかったし……」




関西弁?




上目遣いに顔を上げると


その人はとても驚いた瞳をしていた。











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