13.Sな彼女とドSな彼

「実結、愛してるよ」




「ずるいなぁ……」




愛の言葉を切り札代わりに使っても


俺の気持ちに嘘はない。




「ほんまやで?」




「紀樹はずるいよ……」




文句を言いながらでも


バカ息子の相手をしてくれる実結が


追い詰められていることに


気付いてやることは出来なかった。







「紀樹、ドライブ行きたい」




「今から?!」




「うん。夜景が見たい」




「クッタクタなんやけど……」




「一生のお願い♡」




「実結の一生のお願いは何回あんねん(笑)」







遅い時間の屋外展望台には


二人の他には誰もいなかった。




星が降り注いだような夜景に


しばらく無言で見惚れていた。




「綺麗だね……」




「そうやな」




実結のが綺麗だよ、と


照れずに言っておけば良かった。




うっすら涙を浮かべていたことには


途中で気が付いたけど


抱きついてキスをねだる実結は


いつもより明るくはしゃいでいたから


気のせいだと思っていた。





テンションの高さは翌日も変わらず


紀樹が「また来ような」と言うと


実結は「来れたらいいね」と言った。





別れる前。


二人で行った最後の旅行は


幸せを感じた分だけ自分の愚かさを知って


思い出すと胸が痛む。










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