ササヤカな嘘

青砥けい

第一部 MMな彼女

0.プロローグ

俺はいつも自分のことばかりで


彼女の気持ちも優しさも


何にもわかってへんかったし


わかろうともしてなかった。




愛の中にある嘘も


嘘の中にある愛も


優しさが隠す真実も


真実で覆われた優しさも


今なら少しは気付けるんかな。




初めて君を見たとき


真っ白い光の中で


静かに輝く女神みたいやと


本気で思った。




あの瞬間から


俺の未来にも現在にも過去にも


必ず君の姿があって


運命の赤い糸で結ばれてると


あほみたいに信じてた。




当たり前の幸せが


脆く崩れた夜から


一方的に振りほどかれた糸を


暗闇の中で探し続けた。




闇夜など怖くないのに


光のない世界は


生きてる心地がしなかった。




運命の赤い糸なんて信じない。




呼吸さえ止まりそうな中で


俺を救ってくれたのは


ヴィーナスやなくて


タヌキやった。




恋の力は絶大で


タヌキでさえ聖母に見えるから


不思議なもんやろ?




小指に絡まったままの


赤い糸が緩んでく。




運命は自分の手で切り拓く。




そう決めてたのに


タヌキと出会って知った。




本物の運命ってもんは


遥かに人智を越えてる。




皆が笑うから言わへんけど


赤い糸の引き寄せる運命の力は


月の引力より強いんやな。












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