「この前海に行ったんだよ」


「えー! いいなー!」


「砂浜に巻貝みたいな貝があったから、中の音聞こうと思って耳に近づけてみたの」


「貝を耳に当てると波の音がするって言うもんね! どうだった?」


「『ぬる』って音がした」


「『ぬる』?」


「あれはもはや感触というより音だったよ… 何かと思って見てみたら、カタツムリが角出して槍出して頭出してた」


「…どうしてそんなところにいたんだ、海水で溶けるだろ… その前に砂浜が熱いだろ…」


「あれ以来あの『ぬる』って音が耳から離れないんだけどどうしたらいい?」


「そう言われましても…」

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