The Chaotic Bookshelf
PURIN
DOUBT
彼は緊張していた。
彼は今、学校の教室で3人の友人達とトランプのゲーム、ダウトを行なっている。
それだけで何を緊張することがあるのかと思われるかもしれないが、彼にとってはそれなりに深刻な事態なのである。
というのも、彼は異様にダウトが弱く、いつも大敗を喫しているのである。
嘘をつくと顔に出るタイプなのか、順番どおりの数字だと偽って違うカードを出そうとすると結構な確率で見抜かれて「ダウト!」と叫ばれてしまうし、友人がカードを出したのを見て「もしかしたらこいつ今のダウトなんじゃないか?」と思っても元来の引っ込み思案な性格のせいで「ダウト!」と声を上げることができない。
そうして、結局最後に誰よりも多くの手札を所持しているのが彼であった。
そんなわけで、彼は今度こそは負けたくない、必ず勝つんだ、みんなを見返してやるんだ! という熱い決意を秘めてゲームに臨んでいたのである。
仲間達の表情やちょっとした仕草を観察し、できるだけポーカーフェイスを心がける。
友人達のダウトを見破ることはできなかったが、奇跡的に自分がダウトを見破られることは一度もなくゲームは終盤まで進んでいった。手札はどんどん少なくなっていく。
もしかしたら今回こそは、今回こそは本当に友人達に勝てるかもしれない…! 彼は期待に胸を膨らませた。
彼の順番がまわってきた。先ほど出されたカードは13。出した友人が嘘をついていた可能性もあるが、とにかく13のカードが出たことになっている。
手札を確認する。本来なら次に出すべきである数字はそこになかった。しかたがない。違うカードを出そう。
彼は緊張していた。それゆえに混乱していた。本当に混乱していたのだ。
彼はカードの山に1枚の手札を叩きつけ、高らかに宣言した。
「14!」
「ダウト」
友人全員がハモった。
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