現実パート

第31話 目覚めた少女へのハピネス



「……」



 目を開くと、目の前は白い物が見えた。

 感覚が蘇り、むずがゆさを感じたエリはゆっくりと力を込める。

 鈍くだが手にも感覚が戻っていき、自分の手で目を覆う白い何かをズラした。


「ん……」


 手でそれを掴むとそれは目に巻かれた包帯だったようで、容易に退けることが出来る。

 目の中に光が注ぎ込まれ、視界がボヤける。


「エリ……ちゃん?」


 優しい声色の女性が、自分の名前を呼んだ。

 エリはその声に導かれるようにゆっくりと体を起こす。

 視界は徐々にハッキリと情景を映し出していき、目の前には自分を見つめる人達がいた。


「エリ……」

「……モエカ……さん?」


 目の前に出てきたのは、涙ぐむモエカだった。名前を呼ぶとモエカはエリを強く抱きしめた。


「エリ! 良かった……本当に良かった」


 周りに居た皆は、歓声を上げるカイトやナオミやコウタロウ、デーブやユリエ……ウサテレに写っていなかった沢山の研究員達が、エリの起床を喜んでいた。


「……」


 頭を撫でられ、声を掛けられ、その様子をただ呆然とするエリだった。

 しかし、手に持った白い包帯を再び彼女は見つめた。


「ありがとう、お兄……」


 白い包帯を握りしめると、目元が熱くなる。


「目……ちゃんと見えるよ」


 少女は、夢に出てきた少年に深く感謝した。

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