第23話「移ろいゆく世界」

「小学生が戦争、ね」

 そんなちひろに、頌子は答えた。

「戦争っていう実感はないわ。明るく楽しい魔法少女物みたいだし」

「世界は大変なことになっているのに?」

 ちひろがそう返すと、神奈が疑問に答えるようにいった。

「八年位前に放送されたニチアサのあれを思い出させるからね」

「あれって暗い話だし、途中で失恋してるけどね」

 ちひろが冷静にその作品のことを思い出していた。

「私達が幼稚園児だったころの作品よ?」

 神奈がそう返すと、ちひろは応える。

「なんというかあれは印象に残るわね」

「10周年記念だったもんね。出来はあまり良くなかったらしいけど」

「神奈のいう通り次回作で盛り返してなきゃシリーズ打ち切りもあり得たかも」

「息の長いシリーズだからちひろのいうようなことは起きなかったと思うよ」

「頌子はそういう見立ては得意なのね」

「まあ、苦手じゃないかな」

「それよりもドリンクバーを取らないと」

 というわけで神奈はコーラを取り、頌子はココアを取った。

 ちひろはお茶だった。

「これでみんなそろったわね。後は」

「お待たせしました、お子様セット三つです」

 お子様セットはハンバーグにご飯、

ポテトサラダにふりかけとゼリーが添えられたオーソドックスな物だった。

「それじゃあ、いただけます」

 三人は手を合わせ、食事の挨拶をする。

 そしてハンバーグに手を付ける。

「美味しい」

「まあ、ファミレスだしハズレはしないと思うわ」

「ちひろは冷静ね」

「頌子、私はただ美味しいといっただけよ?ハズレはしないってのはどうも」

「神奈はそういうところが細かいんだから。弟に似たのかな?」

「同性愛に否定的な子は今頃少ないわよ」

 2022年にもなるとLGBTの教育はかなり進んでいた。

 とはいえ子供はそういうのを上手く理解できず、

どうしても可笑しいと思う感情が先に出やすい。

 ただ高学年にもなって否定的なままなのは、

やはり個人の感性も大きいのだろう。

 今からすれば未来とはいっても未だ同性婚は認められてないので、

その辺は保守的な日本人気質が世の中では根強いというのもある。

 実際同性婚の賛否を問うアンケートでは、

悪利用の懸念も差し引いても否とする意見が若干優勢だったからだ。

 在日がどうこうという話がその手の話題で出ているが、

犯罪は貧困によっても引き起こされるので在日かどうかとは別ともいえる。

 それこそ性的マイノリティーの犯罪率とかと同様の話だ。

 一つのデータだけを見て行くのでは、

そういう本質は見えない物だ。

 在日といわれる人々の問題点といえば日本に居ながら反日を行う事実だが、

それも民族意識と切り離せない問題となり根深い問題なのだ。

 アイヌ民族や沖縄問題だってそういうものだし、

全てが○○のせいといって思考停止するのはよくない。

 もし入念に調べた結果特定の何かが原因だというなら話も変わるが。

 水俣病とかは入念に調べた結果工場排水が原因だったし、

白血病と放射能の関係だって同じような物だ。

 ただハンセン病のように実はそこまで恐ろしい病気でないにも関わらず、

隔離の必要な病気とされ人権侵害が行われた場合もある。

 放射線に関するデマもあったわけだし、

やはり最終的には人間の良心が問われるのだ。

 未解決の歴史問題だって結局は国のあり方の問題なわけだし、

その辺は外交政策としてしっかりやらねばならないことだろう。

 むしろ日本が見直すべきなのは黙秘して為すがままにされていた性質で、

太平洋戦争が再度起こるかどうかではないはずであった。

 むろんクローン大戦終結後に世界の中心となった日本は、

否応なくそういう問題とも向き合わなければならなかったわけだが。

 ともかくクローン大戦の間は未だその問題が根深く、

解決すべき問題だったというわけだ。

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