第16話 レギュラー争奪戦

 制服が夏服に変わり、夏っぽい日や梅雨だなと思える日々がやってきた。

 窓から外をみる。風がない。暑い部屋の空気から逃れてるけど効果はない。


「よう、恋する乙女。何か悩んでるのかい?」


 莉子さん口調がおっさんになってるよ。


「暑いだけよー」

「そうか、そうか。暑いんだね。まだまだ暑いね」


 私は振り向き訂正する。


「それじゃなくて気温の話。いちいち、そういう解釈しないで」

「なによー。佐々木先輩の帽子を借りてたって聞いたから、心配したんだから」

「あれは帽子を忘れて……っていつの話よ」

「気をつけなさいよ。あんたはボケっとしてるから。佐々木先輩ファン、多いから恨み買うよ」


 なんで佐々木先輩のファンから恨み買うのよ。買う理由がわかんない。


「ねえ、なんで佐々木先輩なのよ。涼じゃなくて」

「佐伯君にはファンがつきそうになったときには、凛と付き合ってたじゃない。だからまあ、影ながら恨んでいるかも、だけど付き合ってるからね。文句言いようがない。でも!二股なら言えるじゃない!?」

「ないない。二股ってのもないし、佐々木部長もない。って莉子が一番知ってるじゃない!」


 莉子の高らかな笑い声。


「そうよね。あの凛がもう1か月以上? 付き合ってるなんてねえ。佐伯君は何をしたんだか」

「う」


 そう、一週間も付き合えなかった私と涼の付き合いは続いてる。相変わらずの天然に振り回されているけど、楽しい毎日だった。下絵は完成し、今度はキャンバスを持ち出してテニスコートで描いてる。もうあからさまに涼の事を描いてるんだけどね。


 ここで違う人だとまた噂になると莉子のさりげない忠告を聞いて。



 今日は、あ! ホワイトボードだ。レギュラー争奪戦がはじまる。前回よりも人数が多いから総当たり戦ではないみたい。

 今日はキャンバスは部室の影に立てかけて置く。持てって良かった。スケッチブックを開く。



 レギュラー争奪戦がはじまった。前回よりもさらに気合が入っている。みんなあの帝流学園の試合を忘れられないから。



 レギュラー争奪戦の結果、レギュラー6名と補欠3名が決まった。

 涼も佐々木部長ももちろん駿河さんもいる。そして今度はちゃんと涼はレギュラーだった。


「おめでとう。レギュラー。今度は本当の」

「今度控えだったら……」

「何だ? 佐伯」

「うわ、佐々木部長」


 神出鬼没過ぎるんだけど佐々木先輩。まあ、テニスコート出てすぐのところだから、いて当然なんだけど。


「なんでもないです。さようなら」


 佐々木部長の前だと素直ないい子に変わる涼。

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