第30話ちょっとお花を摘みに、糞
金曜日、日本時間十時、脱兎で移動出来ないのがなんとも。歩いてクローネシュタットに戻るにしても一人だとちょっと不安だし、面倒くさいね。
「どなかたクローネシュタットに戻る方一緒に戻りませんか?」
お、渡りに船だな。その方達と一緒に戻ることにした。
「はじめまして、えーすさん。マリア・テレジアです。戦士で農夫です。マリアでいいです」
獣人羊の女性だ、やっぱ羊は女性だよね。うんうん。しかも呼び方を指定してくれるのは大変助かります。他には御茶ノお湯博士という魔法使いのドワーフで鍛冶屋をやってる男性と、東京土民という獣人猿で戦士で農夫、ニホンザルタイプだね。お尻は赤いのだろうか?
雑談しながら戦いながら移動する。戦っている最中にもう一つの敵の集団に背後から襲われる。後衛は、お湯[仮]だけなので、
「クライネファイヤー」「クライネファイヤー」「クライネファイヤー」
を連発して時間を稼いでいる。
「パワーアタック」
MPを出し惜しみしている時ではないので、正面の敵に
「スラッシュ」「パワーワーク」
マリアが剣の斬撃を飛ばし、強烈な一撃を別の敵に与えていた。
なんとか倒しきったところで戦闘スキルの話になり、その後生産スキルの話になったので、私にも話せるネタである調合スキルの話をした。それを聞いたお湯[仮]が
「ローラントさんの所で学んだのですか、それは正解でしたね。それ以外のところ学ぶと、調合二上げるための経験値が全然違うんですよ」
ほほー流石ローラントだな。一番多いところだと経験値が二万必要なんだって。師匠リスペクトしてます。
今度はAIの話になったので、自分でカスタマイズしていると話したら
「え!? そうなんですか、でも最初AIサポートをオフにしてましたよね、AIに詳しいのですか?」
なんだろ、初対面なのに知ってるとか怖いわー。そんなに私は有名なんだろうか? まあいいや。ゲーム上の経緯と仕事で昔AIを取り扱っていた事を伝えた。どうしてそんなに詳しいのか尋ねたら、何か言いにくそうな感じで、モジモジして、
「ごめんなさい、実は……」
なるほど、掲示板で情報共有していて、集団ストーカーのような存在と言ってたが、ギルドとかで励ましがあったお陰で頑張ってこれたのも事実だ。この人達が居なかったらここまで続けられなかったかも知れないな。既に掲示板は解散しているというし、お礼と、これ以上していないなら気にしなくて良いと伝えた。
二時間弱だったけど楽しく移動出来た。いい人たちで良かった。フフフ、最後別れる時にフレンド登録してもらった、プレイヤーの知り合いが増えているぞ。
調合二にするために薬草、毒消し草、合わせ草の生を乾燥させに行く、今回は生産しないので、武装は必要ないはずだ。持ち物枠もあるし武装して向かうけどね。なんで生産するのに武装しないといけないんだよ。
商会で材料を取り出して西門ギルドに向かう。屋上のレンタル代を払って屋上にあがる。約二時間で、薬草:生、毒消し草:生を七百個ずつ、合わせ草を千四百個並べた。疲れたー、一旦昼ご飯休憩にしよう。
日本時間十三時、ゲーム時間六時、花成分の装備が無くなったみたいだし、花を摘みに行くかあ。一人だと大変だからエルドワに協力して貰えないかな。スラム街に向かって歩く。
「お。おはよう、えーす。何か用か?」
例の花を摘みに行きたい旨をお願いしたら二つ返事でOKしてもらった。
「なんだよ、みずくさいな。何でも困ったことがあるなら言ってこいよな」
と笑いながらお尻をバンバンと叩く。人に叩かれて喜ぶ趣味はありません、けど、でも……悪くない。
「えーすさーんおはよー」「じいちゃんお話してよー」
子供達と少し会話して別れた。みんな可愛いよなあ、孫的な意味で。また来ようっと。
南門から移動して人目がつかないところまで来たので、エルドワをオンブして、
「脱兎」――――「脱兎」――――……
いやー、やっぱり便利だわー。あっという間に花の群生地に着く。蜂に警戒しながら片っ端から摘みまくる。花や薬草や毒消し草、木などは、
「蜂だ!」
エルドワが叫ぶ。直ぐにエルドワに合流し脱兎で遠ざかる。他にも花が咲いているところがあるので、そちらに移動する。
蜂から何度も逃げ回るので効率が悪い。それでも何とか六時間で、一人千二百の花を積むことが出来た。エルドワにお礼の十万マールを渡して別れた。
日本時間十八時、早めの夕飯を済ませてログインする。既に前田と謙信がログインしていた。前田はイベントについて何か考えがあるらしい。
日本時間十八時半、パートとハンガクもログインしてきたので、PTを組んでPTチャットで会話をする。まだハンガクとパートはリンスドルフなので、これから南下するそうだ。
前田の案は、敵の突進を槍衾で対抗するという。なるほど、確かに槍なら相手が近づく前に一方的に攻撃が出来るし、突進してくる相手にもプレッシャーになるだろう。兎組くらいのメンバーがいれば少しは対抗出来るかもしれない。
クローネシュタットの北門に集まっている兎組のメンバーとも協議し、その案に賛成したので、実装する方法を考えていく。
構成は、槍だけのPTをつくり横に並べ、PT内で二列にして前進する。弓だけのPTも作りたいらしい。槍や弓、矢を生産する必要があるので、生産をそちらを重点にシフトする。
生産の話になったので、花を二千四百程摘んだ事を伝えたらハンガクに驚かれたが、PTを使う分には問題ないというか、作りきれないらしい。でも兎組全体では足りない。時間が勿体無いので、こちらに今いるメンバーで生産を開始する。
「えーすさん、こんばんは。ハンガクさんの指示で花を受け取りに来ました。十五代目高橋名人ですよろしく、鍛冶屋です」
どうやら獣人バクのようだ。花を千個ずつ渡した。渡した花を
「えーす、鉄が少し不足しているそうです、今のところ鉄鉱石はNPC販売しか出回ってないので。個数ですか? 一箱あれば十の鉄材が用意出来るので、目標数分の槍を作るなら二十箱くらい有れば足りると思います。もう少ししたらそちらに着くので」
それならアイゼンハルトに行った時にお礼で貰った物があるな、
「鉄鉱石百箱有るから提供しよう、ちょっと取ってくる」
商会で交易保管棚から取り出して、他の鉱石の種類も確認する。
「他にも、銅鉱石、銀鉱石、金鉱石、亜鉛鉱石、鉛鉱石、錫鉱石、金属ヒ素、蛍石、ビスマスが百箱ずつ有る、欲しい物があったら言ってくれ」
どうせ使い道なんて思いつかないから、利用できる人が利用したらいいさ。ハンガクがなんか呆れた口調で話しかけてくる。
「なんで鍛冶屋でもないのにソンナニ大量の鉱石を持っているんですか」
何でって言われてもね。とりあえず鉄鉱石以外の鉱石は使い道が分からないので、十箱ずつ持って行くことにした。兎組の面々で何かに使えないか考えるそうだ。
ちなみに鉄鉱石や鉱石類はNPC買いで三万マール以上するので、無償提供は駄目だと言われてしまった、とほほ。そうそう普通の人は、交易品は一店舗につき、ゲーム時間で一日十個までしか買えないそうです。
日本時間十九時半、ゲーム時間十九時、パートとハンガクが到着した。早速パートが兎肉をフライパンで炒めようとしていた。
「そんなレシピは無いです」
と断られたが、無理を言って持っていた薬草:生、毒消し草:生、合わせ草:生を一緒に炒めて貰った。肉だけじゃなくて野菜? も取りたかったんだよね。で出来上がったのがこれだ
兎肉炒め薬膳……兎肉と薬草等を炒めたもの。食べることでHPが回復する。毒状態を回復する。
パートが驚いていた。私も驚いたけどね。今後戦闘終了後のメインは薬膳料理になるかもな。
とりあえず今日は生産に力を入れる事になったが、私は特にやる事が無いので、ハンガクに素材を渡したら、早めにログアウトしようと思う。
「明日は、朝から花を摘みに行きませんか? あとコウモリの糞も手に入れたいですね」
私はいつも暇だから良いんだけど、花は多分歩いたら戦闘込で七、八時間掛かるし、蜂がいるから大変だと思うだけどな。コウモリの素材は、エールラーケの近くだから、歩いたら十五時間掛かるんじゃない? あっ駅馬車ね。
みんなと相談して、エールラーケに日本時間九時半集合、十時出発となった。折角なので、エールラーケまでは今日中に駅馬車を使ってログアウトしたまま移動する事にした。
と、いうことで駅馬車の馬車停の付近で待機する。直ぐに馬車がついたようだ。うーん見た目はちょっと長いリムジン馬車って感じかな。すごい人数が馬車に入っていく。馬車に入ると車掌さんだけが居て、尋ねてくる。
「エールラーケ行きです。個室と共用スペースのどちらで移動しますか?」
個室は一万、共用は千マール、随分良心的な値段だな。お金もあるし個室で移動する事にした。
「二十二時になり次第出発します。四時に到着予定です」
到着は日本時間で零時だな。ちなみに乗りっぱなしでも問題ないそうです。向こうに着くとこの馬車は停車中の状態になるので、安心してログアウト出来る。
扉を開けると、片側三人ずつ座れそうな場所に移った。椅子に座ってログアウトを選ぶ。
土曜日、日本時間九時半、ゲーム時間二十三時だ。馬車の中は明るいが、馬車から出ると確かにエールラーケで夜だった。ランタンに火を灯して集合場所の北門に向かう。
北門の辺りには、既に数十人集まっている。
「おはようございます。皆さん」
ゲームの中は夜だけど、日本時間は朝だからこれで良いはずだ。 皆からも「おはよう」「おはようございます」という声が返ってきた。
日本時間十時、時間になったので出発する。総勢百五人の大人数だ、その内、レベルの低い人たち十八人がラージヤマアラシ狩りに専念して針を集めることになった。
ダンジョンの前に到着した。さあ、ダンジョンリベンジだ
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