第9話新称号とAIサポート
日本時間十九時、ゲーム時間十八時、ログアウト前に買っておいた串焼きを食べて元気が出てきた。よし狩りするぞ!
西門の側は人が少なめなので狩りがし易い。といっても、私の場合は兎がドンドン寄ってくるので、ほかの人と重ならないだけのスペースがあれば全然問題ないんだけどね。
早速、兎が三体出てきて一体だけ倒すが、もう体力が無い。もっと効率良く戦えないと駄目だな。はあぁと諦めていたその時、獣人ライオンの人? が残りの二匹を倒してくれた。
「ありがとうございます。たいへ……」
その人も礼を最後まで聞かずに、新たな場所に向かい犬を狩り始めた。うーん正義の味方ってのは余計なこと言わないのかも知れないな。
しかしこの人の名前も覚え難い、前の人と知り合いなんだろうか? ch0zf773のような感じだった。何か意味があるものなのかな? アニメとかの設定かも知れないね。
今日は兎がでなくなるまで狩るぞ! と決めて頑張る。薬草、毒消し草を摘み、兎が出て、倒して、倒されて、ピンポンして、お礼を言われる。
空が夕方になり、倒されたので終わろうと思ったら、新たな称号をもらった。
「称号:“兎のふん”を入手しました」
……。酷くなーいー。ドウイウコトー。
・兎から見て餌以下。周囲から評価が高い割に不遇な人のための称号。
・フンだけにウン[チ]がつく。アイテム入手率UP。生産物の成功率UP。状態異常率低下。
評価が高い? なんで評価なんて上がる要素があるんだ、馬鹿にされることはあっても。まあ考えても仕方ない、兎の死体も溜まっているし一旦ギルドに行って精算するのもいいね。
西門側にあるギルド出張所に入り、クエスト報告と買取をお願いする。
「兎の討伐が十匹*五回で二千五百、兎の死体は五十羽で千、合計三千五百マールだね」
「三千五百マールでよろしいですか? はい いいえ」
「えーー! 兎は一体百マールではないのですか?」
どうやら。兎の納品が多くて値下がりしたらしい。討伐の報告だけして兎は返してもらった。うむむ。需要と供給みたいな論理がゲーム内に持ち込まれているのか?
ゲームで店売りなんて価格固定じゃないのかよ! ワンランク上の犬は何も出さないらしいし、コボルト、ゴブリンなどはPTじゃないと無理っぽいし、金を稼ぐ手段が無いな。
まいったなあレベルもあがらないし、もうダメかな。
「ところで称号をもっているようだがセットするかい?」
あー。あるね。最低な名称な称号が。でもこれをセットしたら、良い物がもらえるんじゃない?
もしかしたら逆転の可能性があるかもしれない。セットをお願いした。
……
「ブハハハ。ッッッッッッッッッ、ハッハ。しんじゃうーしんじゃうー」
「T_T うさぎおじさん。負けないでー」
「すげーな。鋼メンタルだな。俺なら貰っても設定しないわ」
「兎爺さん、応援しているから頑張ってー!」
「伝説が始まった」
好きなように言うがいいさ、もうヤケです。とりあえず掲示板のクエストを見る。
隣町からのお使いクエストが多数出ている。レベルが低いプレイヤーは隣町に行けないようで残っているのだろう。
NPC女性に聞いたところ
・クエストの中で一番近い隣町は東門から出たブラウメーアという港町。約四十km、歩くだけで八~十時間、戦闘込みだと往復の間に一泊は必須。街道沿いに進めばたどり着ける。
・こちらの商会で発注書を受取り、相手街商会で荷物を受取り、こちらの商会に納品する。
・基本ポシェットに入るので荷車は不要。
・ランクが高くなると一度に依頼する量が増えて報酬も増える。
・期日より早く納品するとボーナスが入り、期日までに持ってこれないと報酬が減額される。納品物を失うと罰金を課せられるが、よっぽどのことが無い限り、納品物を失うようなことは無い。
脱兎で移動したら達成できるんじゃないか? 四百m*百回。MPが二十だから、途中で五回くらい休憩すれば行けるはず。
今持っているクエストは全部破棄して、ブラウメーアとのお使いクエを五個受ける。
商会に移動して発注書をもらい東門から出る。
目立ちたくないし、歩いている人にあたって攻撃と判定されるのも嫌なので、街道が見える範囲で草原を移動する。現在ゲーム時間で二十二時。周りに明かりも無いし人もいなさそうだな、よし。
「脱兎」――――「脱兎」――――「脱兎」――――……
途中で休憩を入れつつ、なんか化物が見えたけど全部ぶっちぎって、ゲーム時間で零時にブラウメーアに到着。
商会で荷物を受け取り、この街のギルドが見えたのでログアウトするために入った。プレイヤーは誰もおらず閑散としている。NPCの女性に尋ねる。
「ログアウトドアはどこですか?」
受付の右横に二階にあがる階段があり、その階段の下のドアがログアウトドアだそうだ。
ちなみにログアウトドアの仕組みを先ほどのNPC女性に尋ねてみた。
「世界の神秘。私のようなものにはとても理解出来ません」
「ゾンネ様のご加護としか……」
「今までの流れで、私が説明出来ないって分かりますよね? 何でそんなにしつこく聞くのですか? あれですかクレーマーですか?
クレー爺ですかジジイだけにプププ、クレー爺、クレー爺クレーマー、プププッ」
NPCお姉さん……女性にはしつこくしない方がいいですね。まあ不思議システムってことなんだろう。
ゲーム的にはログアウトやログイン場所が不特定多数になると管理が大変なのかもしれないな。よしドアを開けて中に入る。
日本時間では二十二時半か、寝るには早いけどゲーム内では倍進んでいるから疲れたわ。今日は落ちよう。
翌朝、朝食を作りながらCONNECTを見る。孫娘との板を見ると
「昨日の朝からゲームが始められました。
まだLV三だけど(´・ω・`) なかなか面白いよー。
おじいちゃんも始めたら?(。◕‿◕。)」
……どういうことだ、ゲーム時間は私の方が多いはずだ。いくら私が下手でも、そんなに差が出るものなのか?
これが老いというものなのかorz
「良かったね(*゜▽゜*) ところで、そのゲームは難しくないのかな? お爺ちゃんは反射神経がそんなに高くないから難しそうだな」
と書いて様子を伺う。
孫娘は通学途中だったようで直ぐに返事が来た。
「戦闘とかはAIがサポートしてくれるから、比較的簡単に出来るよ(´・ω・) 面白いからやってみてー」
何AIがサポートって……焦げた魚を朝食にして、食べ終わったらゲームのホームページを読もう。
ゲームのホームページを確認する。衝撃の事実[チュートリアルをカットして、AIサポートもオフにした影響]が判明。
・戦闘はAIサポートにより操作性が向上、操作が下手な人でもある程度戦える。
・AIサポートはゲーム内の生活の色々な行為に役立つ。例えば兎を倒した際に、肉と皮に自動で分離したり、生産などの単純作業をする際には、別のことを考えながらでも自動で処理が可能。
・標準AIはオープンソースを利用、カスタマイズ可能、別AIの利用も許可。但し、全自動狩りというログインしない状態での狩りは禁止。
・経験値を使うことでLVUPやスキル習得が可能。自分好みのキャラに育てよう……
えっ……。そういえば最初にAIサポートが何とかって言われた気がする。あれをオフにしたからこんな目にあっているのか。誰だオフにしたのは……。
はい私です、少なくてもチュートリアルくらい受けるべきだったね。別キャラ作成したいけど無理だよね、二ヶ月待ちだもんねー。再作成もしばらくは受け付けてないみたいだし、はあー。
とりあえず、AIサポートをオンにしよう。どうせこのキャラでしかゲームができないんだし、どんな感じか確認してから今後のことを決めてもいいだろう。
日本時間九時、ゲーム時間二十二時、ブラウメーアのギルドでログインして、フロアNPCのお姉さんに質問をする。
「すみません。AIサポートの利用方法とLVUP方法が知りたいのと、買取をお願いしたいのですが」
「AIサポートとLVUP方法は私が、買取は右から二番目の窓口になります」
昨日の事は水に流してくれたようで良かった。
・AIサポートはオンにしようと思えばオンに出来る。直ぐにオンになった。
・AIサポートは十種類登録できて、変更したいと思えば何時でも変更できる。標準は万能のみ設定されている。また十種類に分けず、大きな一つのAIとして登録することも可能。
・LVUPは冒険者ギルドの窓口で行える、LVUPには経験値が必要。ここだと一番左の窓口。
・経験値は戦闘スキルや商業スキルを覚えるのにも使える。取得条件は明らかになっていない。
今までの戦闘経験や商業経験から、覚えられる候補と金額が表示される。
・冒険者ギルド以外でもスキルを覚えられる場所があるが冒険者ギルド以外の詳細は不明。
LVUPをするために、一番左の窓口に行く。
「現在二百四十三の経験値があります。LV二にするには九十の経験値が必要です。LVUPしますか? はい いいえ」
結構必要なんだな。もしここでLVUPして、調合スキルを覚える時に足りなかったらどうしよう。
まだAIサポートを有効にした状態で戦闘していないし、経験値が稼げる事が確認してから判断で良いな。
焦ることはないはずだ。LVUPを見送った。
「兎の買取だね。この状態なら五十羽で一万だね」「一万マールでよろしいですか? はい いいえ」
当然“はい”を選択する。ついでにこの状態以外に何があるのか聞いてみた。
・兎の死体そのまま状態を百とすると、皮だけに切り分けると六十、肉だけに切り分けると六十、あわせて百二十になる。
加工した方が価値があがるということらしい。
・肉と皮は倒した直後に切り分ける。通常はAIサポートがやってくれる。
なるほど、他のキャラクターが一瞬で別のものに変えていたのは、AIサポートなんだね。そして私はそれを知らずに八十一匹の兎を販売してしまったのか。
リサーチとか仕事の基本なのにな。というかゲームだから仕事じゃないけどさ。
兎を狩ってこの街に持ち込んで売れば……、いや違うな、他のプレイヤーから買って、ここに持ち込んで売れば儲かるな。
今なら誰もいない私だけの商売。ブルーオーシャン戦略だねブラウメーアだけに ププププ っは、いや掛けてないです。全然掛けてないです。
面白いと思ったら口走ってしまうのはオッサンの悪い癖だな。ここでは愛想笑いしてくれる部下もいないしね。
相談を受けてくれるギルドフロアにNPCにポシェットの仕様とプレイヤーからの買取についても聞いてみた。
・広く世の中に出回っている[私も使ってる]ポシェットは、三十種類のアイテムが入り、スタック出来るアイテムの場合は一枠で百個まで入る。
百一個以上入れた場合は次の一枠を使い、最大で三千個まで同じアイテムを持つことが可能。
・通常十万マールでギルド内で販売している。
・上位のポシェットも存在している。
・ポシェットは同時二個までしか装備出来ない。
・プレイヤーとの取引は一対一でトレードを行う。
・バザーで不特定多数の人から購入可能。買取金額と個数を提示しておく。
・バザーは御座が広げられる程度の場所、街の中でも、外のフィールドでも、無料で開ける。大きな街では露店推奨された箇所があるので、そこで開いたほうが人が集まるので効率が良い。
・所持金以上、ポシェットの容量以上の買取は出来ない。
ほほーん。トッププレイヤーがいつ来るか分からないが、数日、長くても一週間くらいが儲ける限度かもしれない。
私が売ることで価格が下がるかもしれないし、買いすぎてこの街についたら大赤字なんてのは防ぎたいな。
よし、まずは無事にクローネシュタットに戻って商会に納品する、信用第一だ。
その後犬を狩ってみるか、兎は出てこない時間だから仕方が無い。とりあえずそんなところかな。
ゲーム時間二十二時半、ブラウメーアを後にする。
「脱兎」――――「脱兎」――――……
途中休憩を入れつつ戻る。野営しているNPCらしい商隊が複数いたが無視する。
クローネシュタットに近づき、プレイヤーと思われるランタンの明かりが視界に入るようになったので、最後は小走りで街の東門にはいった。
ふーー疲れた、肉体というよりは精神的に疲れた。とにかく納品しよう。商会まで移動して納品する。
ゲーム時間一時、残念ながらゲーム内では二日経過していた。五時間位で往復出来そうだな、受けるタイミングを気をつければ一日で二往復以上できそうだな。
「凄いな。初めてにしては結構早いね、これからもよろしく頼むよ」
これで早いらしい。次は本気の私見せてあげるから。
ギルド出張所に入るとプレイヤーが少し居る、まあ平日だしね。それでも私を見かけて声をかけてる人が、
「おじいちゃん応援してます。頑張ってくだいハアト」
「今日も(*'×'*)ポップオネシャ~ス」
「あんまり、無理しすぎんなよ」
あれ? なんか頑張れる気がしてきた。納品クエストを報告して六千四百マールを入手。
クエストでジャイアントラビット退治十羽で五百、野犬退治十匹千マールだけ受ける。
いまの兎相場を確認したところ、死体二十マール、皮、肉、十二マールだった相変わらず暴落状態だね。バザーの場所[中央公園]を聞いてからギルドを出る。
さてAIサポートを利用した戦闘をしてみよう。帰りの移動も凄いスムーズだったし、これは期待できるぞ。
西門を出ると当然真っ暗だ。空いている野犬の前に立つ、相手も気がついたようだ。私は杖を振りかぶると犬が突進してくる。
バキッ! 犬の顔面にクリーンヒットした。兔に比べたら大きいし動きが若干遅いのであっただけなのかもしれない。
犬が再度突進してくる。避けようと思ったら、体全体が大きく横に飛び跳ねて攻撃を避ける。
なんじゃこれ。驚いていると直ぐに犬が突進してくるが今度は避けられない左腕を噛まれる。
相手の方に向かって腕を押し込むと犬が腕を離す。片手でもっていた杖振り再度犬の頭に軽い一撃を食らわす。犬が距離を取って再度睨み合いなる。
突進してきたところで杖を振り抜き犬の首を打つ。犬が転がったので、すかさず近づき杖でボッコボコにする。
「野犬を倒しました。経験値六が入りました」
野犬の死体にナイフを刺すと野犬が消えて何も残らなかった。なるほど確かに何も出ないね。
でもこの強さで兎の倍の経験値ってすごいな。というか攻撃があたりやすいし避けやすい。
兎相手に五回フルスイングしたら一回当たって、五回攻撃されたら一回避けられるような状態だったんだけど、AIサポート凄いな、これならいけるかもしれない。
街のそばは結構人がいるので西の森の方に向かう。
野犬がいたので再度戦闘を仕掛け、苦もなく経験値六を手に入れた……。
私って何て無駄なことをしていたんだ。地面に倒れこむorz。馬鹿にされる理由がわかった気がしました。
犬は何故か穴から出てこないので、いる方に向かって歩くしかない。倒しては、座る、移動を繰り返していると段々と仕組みが分かってきた。
犬は森の特定の場所から出てきて、そこから町に向かって歩いているようだ。ということは、犬が出てくる場所に近づくと一度に戦う犬の数が増えそうだな。
結構いい感じで狩れているので無理はしなくていいだろう。空が明るくなってきた、もうそろそろ日本時間で十一時半だし、町に戻ってログアウトしよう、昼ご飯だね。
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