13話「クラスチェンジ」

 ファイター・ウィザード・シーフ・村人・トリックスター・弓使い


「お! 何気に6種類もあるみたいだぞ!」

「ハジメ殿、ふつうは2,3個、浮かび上がればいいほうなのだ」

「ハジメ、わかってるよね?」

「ああ、ウィザード以外だろ? わかってるよ。でもここにウィザードがあるってことは適職でもあるって意味じゃないのか?」


 俺の言葉にアリスも驚いてるようだ。

 

「レベルがあがると魔力も増えるんじゃねーの?」

「むぅ……アリスにもわかんないや」


 まあ爆裂魔法があるし、アリスもリシュアも基本魔法職だ。

 パーティのバランスを考慮すると、できればそれ以外で……って。

 ――――しかし、どれがいいんだ?

 この中に異世界人の俺が手にすると、思わぬチートが開花する職が紛れ込んでいる気がする。

 それは……どれなんだ?


 ファイターか? いや何となく普通すぎて違う。

 何気に村人ってのが気になるな。

 ラノベなんかでも、最強の村人系の話は良くある。

 最初はザコだけど成長率だけはバカ高いとか、レベル上限に際限がなかったりだとか考えられる。


 この瞬間で、俺の今後の異世界ライフの快適さが決定されると言っても、過言ではない。

 む、む、村人かな……緊張でプルプルと全身が震えだす。

 こ、これっきゃないだろ!

 俺が脳内で決心しようとした矢先、アリスが笑いだした。


「プププ。村人なんてあるんだね! ハジメにはお似合いかも」

「こらこら、アリス殿。ハジメ殿が誤って村人を選んだら、大変なことになるぞ」

「あら~? 村人なんてあるの?」


 え!? 誰かもう一人見てるの?

 誰だろうと声の方に振り向くと、冒険者ギルドの職員のお姉さんだった。


「も、もしかして……村人って超レアだったりするんですか?」


 期待を込め職員のお姉さんに尋ねた。

 

「いいえ、全然そんなことなくってよ。一応、農作業などの一次生産職に補正はつくけど……村人にするの?」

「え? いや、やっぱ……やめようかと……」


 クッソー! わかんねぇ!


「ねね、このトリックスターって何?」

「あたしにもわからぬ」

「あら、初めて見るわね」


 ――――え? 誰もしらない? 

 

 き、き、キタアアアアアアアアアアァァァ!!!

 これこそが天啓なんじゃないだろうか。

  

 わかんねぇけど、誰も知らないんだ。

 それってつまりウルトラレア?

 もうこれっきゃない!


 俺の確固たる意思が玉に流れ込んだ瞬間、光を放ち消滅した。

 全員が俺に注目する。


「選んだ職業はギルドプレートに表示されるわよ。あと習得スキルの情報は頭の中に浮かぶと思うけど」


 職員のお姉さんが親切に教えてくれた。


「ハジメ、どれ選んだの?」

「ハジメ殿は、ファイターを選んだ気がする」

「俺が選んだのはトリックスターだよ」

「それ……選んで大丈夫だったのかな……ハジメ」

「未だ誰も見たことがないものだろう。ふーむ、ヘンなものじゃなければいいが……」


 ギルド職員のお姉さんも、初めて見るクラスで気になってるようだ。

 だがもう俺は家に帰って引きこもりたい。


 スキル習得

 クラス:トリックスター

 昼寝:Lv 1/1

 応援:Lv 1/1

 ルーレット:Lv 1/10


 泣けてくる。

 明らかにネタっぽいじゃねーか。


「あのう職員のお姉さん? 頭がクラクラするんです。ちょっとそこのソファーお借りしてもいいですか?」

「あら? 大丈夫? 自由に使ってもらって構わないわよ……」


 俺は職員のお姉さんに礼を述べると、覚束ない足取りでねっ転んだ。

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