第28話 何の為?
放送部のしきりとパソコン部の演出と参加者のなんだかわからないやる気のおかげで無事終了。参加してくれた部とか学級委員まで加わって集計を取る。参加者にはそのままのコスプレで舞台袖で待っていてもらう。人数も多いのと色分けしていて、さらに番号だけだったのですぐに集計が終わり、仮装していた参加者を壇上に移動してもらって、一位、二位、三位の男女の表彰とスムーズに終わる。人数が多いので片付けも早く終わり、箱とコスプレが生徒会室へ戻って終了。結構疲れたけど面白かった。コスプレ慣れして行く生徒達には不安を覚えるけどね。
帰り道、榊がさっきの袋を持っているのが気になる。袋だけならいいけどさっきと同じように膨らんでる……よね。絶対。
榊の家に入って私の予感は的中する。榊が料理当番だったので榊の料理している隙にさっきの袋を覗く。入ってるよメイド服。そんなに好きなのか? ついに私物なのか?
「香澄、勝手に人の物を見るなよ」
バレた。後ろに榊の気配。
「だって気になってて。これって先生に借りたの?」
また違う色のメイド服。何種類メイド服があるんだ! あの学校は? ってか榊なんの為に持ってるの?
「さあね」
「なんで、さあね、なのよ!」
「さあね。知りたかったら着ればわかるよ」
どういうことなの。なんで着れば学校から借りたかどうかわかるのよ。
「……なんでわかるのよ?」
と、私がもう一度確認しようと袋をあけると榊に取り上げられた。
「正解は着ないとわからない」
ん! もう!
「じゃあ、いい」
「ふーん」
ああ、榊キッチンに袋を持って行っちゃった。
暇して料理をする榊を見てるだけの私。話かけても聞いてくれないし返事もない。榊の意地悪!
「ああ! もうわかった! 着るから貸して!」
この沈黙に耐えられないよ。私の言葉に嬉しそうに榊がキッチンからこちらに来る。今日は煮物だなこの余裕。キッチンから出過ぎだよ。
「じゃあ、これ! はい」
ドンドンさっきの袋とともに榊の部屋に押し込まれる。
ガチャ
ああ、もう押し込まれたし。
仕方ない、袋からメイド服を出す。と同時に
コロン
と何か落ちた。ん? なんで? これ? って・・・榊購入してるじゃない? ついに私物なの?
拾った私の手には値札のついた猫耳が。
トントン
「な、何?」
「ちゃんと着る約束だぞ! 着替えろよ! ハサミは机にあるから」
「わかったから。入ってこないでよ!」
さらっと着て済まそうと思ってたのに。榊の机を見ると机の上にハサミが置いてる。くそう! また榊のできレースじゃないか! 学校であっさり引いたのは私がこの袋に興味を持つ為の作戦じゃない!
諦めて榊に渡された服に着替える。はあー。セットじゃない。上下。これってただのメイド服じゃない。メイド服に尻尾がついてる。猫の。あいつはこれを持って帰ってどうする気?
「おーい! まだ?」
「着替えた!」
ガチャ
榊ドアを開けるの早い! 脱いだ服そのままだったから慌てて畳む。
「耳は?」
やっぱりこれも?
仕方ない耳もつける。
ん?
「またそうやって! 写真を撮る!!」
榊何時の間に携帯持ってるのよ!
「いいだろ」
もう!
「それよりご飯だ! 食べるぞ!」
「え? いや着替えるし」
「冷める」
煮物に冷めるってないしって、また腕をつかまれて食卓へ。
寒いってばもう十二月なのに。この服装は!
「寒いってば」
「大丈夫。おでんだ」
いや、そういう問題じゃないし。
結局そのままご飯を食べて榊が洗い物をしてる隙に着替える。なんてやつだよ。猫耳メイド服でおでんを食べるとは思わなかったし。って、いうかこれ何のため?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます