第31話 夏休みの計画をする
二週目の日曜日。日曜日は父や母もいるのに拓海は朝も昼もいつもと変わらず私の部屋に乱入してくる。なのに今日は昼から私の部屋に来ない。朝は勉強だー! っていつものように来たのに。
気になって部屋から出てみた。根性ないな私。自分から勉強するよ! って拓海を誘えない。まあ、いつもはこんな風に迷う暇もなく拓海がやって来るんだけど。
リビングから声が聞こえる。リビングに近づく。父の声と……拓海? なんか話してる。もしかして、次の住むところの話? リビングにどんどん近づいて行く。ドキドキと胸が高鳴る。類に泣きついてここにいて欲しいと頼んだ自分が蘇ってくる。できないんだ……拓海に気持ちは伝えないと決めたんだから……。
父の姿が見えた。父の声が大きく聞こえたのはドアがあいていて父が廊下から見える位置に座っていたから。拓海と向かい合わせで座っている。母も父の隣にいる。ああ! 本格的な話をしてるんだよ。これって……。
「お! 樹里ちょうど良かった!」
私は父に見つかった。
「なに?」
胸の痛みを必死に隠してリビングに入る。
「夏休みなんだけど、拓海君と軽井沢だぞ!」
「は? はい?」
拓海が軽井沢に行くって話をしてたの? あれでもお父さん今……と、っていったよね。と、って。
「拓海君のところにね、別荘があるんだって! 温泉もあるんだって! 樹里いいわねえ。お母さんも行きたいけど仕事あるのよねえ」
「………?」
私の中からハテナが止まらない会話が続いてる。拓海のところに別荘があるってって?………拓海には家がないのに? 別荘って? え? 一人暮らしとかを別荘とは言わないよね? えええ? わけわかんない。
「樹里、嫌か? なんか予定あるの?」
返事ができない私を心配して拓海が聞いてくる。
「え、ええ! いや、ないよ。夏休みの予定はない」
拓海が夏休みを楽しみにしてたのはこの話?
「でしょ! いつも家でダラダラしてるんだから」
母め! 夏休みもほとんど果歩が吉田君のバスケ部の練習を毎日観にいくから私が暇してたの! あの二人一年の夏から付き合いはじめたよなー。だから、高校生になってからの夏休みって家でダラダラしてたな。あ、ダラダラしてる……。そういえば……果歩と吉田君もあのベンチに座ってたな。夏休み前だった……私達と同じだな。
「うるさいな! ダラダラはしてない! ちょっと暑いだけだよ!」
そう暑さのせいだよ!
「そうだな! 軽井沢だぞ、ちょうどいいよな。夏休みの軽井沢だぞ! 快適だから勉強もはかどるな」
お父さんいいの? もうすでに拓海と二人きりって毎日のようにほぼなってるけど。その別荘とやらに行ったら本格的に二人きりになるんだろうけど……。う、自分で首しめたかも。
「プールもあるぞ! 樹里」
拓海のこの一言に
「ああ、樹里は泳げないんだよ」
残念そうに答える父。
「そこは涼む程度に入るもんでしょ? 本格的に泳がなくていいじゃない! お父さん」
気にするとこ間違ってるよ。そして、泳げるなんて言葉の出ない私。
「えー! いいなあ」
そして母も間違えてない?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます