第26話 働けるモノになってる
「いいなあ! それ! 薬局に帰り道同じものがないか見てみよう!」
「うん。そうだね。これなら自分で貼れそうだし」
怪我している手は左手だ、自分で十分貼れるよね。
「無理だろ?」
「え?」
「いちいち倒れてたら」
「え? ああ、そうだね」
さっきのは前の傷の状態を思い出したからなんだけど、だから多分大丈夫なんだけど……言い訳になるだろうか? 拓海とこうしていられる。
「ほら、ココ!」
「え?」
また、ココ? 確かに涼しいんだけど。通り過ぎる生徒達……拓海は気にならないのか? そして周りのイチャイチャな人達も。今日は女子生徒がワラワラと賑やかにしてる。あそこは賑やか席なのか?
そういえば、水族館の話もあまりしてなかったか、ん? 並んでる時にはなに話してたっけ? 拓海といると話が弾む。気づけば気を使って話題を選んで話さなくなってる。それでも、拓海が傷ついたり、落ち込んだりそういうところが全くない。なんで影がないんだろう。思わず聞けそうに思えるけど、さすがにそれは聞けない。
とっととベンチに座る拓海の横に私も座る。不思議な場所だな。こんな真昼になぜか心地よい場所。ベンチがいつも満員なのも頷ける。
ただし、通り過ぎる学生がいなければだけど。拓海は気にせずに話を続けてるんだけど。
*
帰り道の薬局で学校で貼ってもらったのと同じようなのを見つける。
「見てこっち! 防水だよ! 洗い物ならできるよ!」
「お! じゃあ、それだな」
てことで防水加工された物を購入。さすがにご飯は作りまでは遠慮するけどね。こんな手ではさすがに作るとは言い出せないよね。
帰ってからは一緒に勉強。そろそろ受験勉強にも手を出そうと薬局の後は本屋さんにも寄っていた。果歩達が本当に本気で勉強やってるかは謎だけど、受験生としてはそう聞くと焦るんだよね。
ってことで、勉強が終わるとキッチンでの話タイム。私ってこんなにおしゃべりだったんだ。勉強中はさすがにそんなには話をしないけど、こうしてキッチンにいると話が弾む。料理が出来て食卓にも話の花が咲く。全く今まで一人だったのに。後でズーンと来そうだな。拓海がいなくなったら。一人の時間を持て余しそう。……ああ、想像して苦しい。そしてさみしい。
今日こそ、洗い物は私が! とその前に拓海に防水タイプに貼り直してもらう。やっとナマケモノからやや働けるモノになれた。
***
やっぱり三日坊主ではなく一日しか頑張れない私。こんな恋してるから悪いのよ! 悩みの種が目の前に目覚めたら至近距離にいる。寝坊を拓海のせいにしてみたり。はあー、バカ。
「おはよう。お! 樹里、傷だいぶ良くなってるみたいね」
朝から目ざとい果歩。ガーゼからの変化に気づいたね。
「おはよ。そうなの! 防水だよ! 防水!」
防水をやたらと強調して指を見せても反応なし。家事しない人には防水のありがたみがわかんないのよ! 洗い物ができるんだから!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます