第21話 デートしている?

「樹里、どうした? 無口だな?」

「え? そうかなあ」

 完全に無口だったよ。回想しまくって……あれ? 拓海も話してなかったけど?

「拓海こそ、珍しく無口じゃない!」

「そう? 俺って無口だから」

「どこがよ!」

 そこからはいつもの拓海になった。もう五組の男子生徒をだいたい想像できる私がいるほど。自分のクラスの男子より詳しいね。

 電車が目的地に着いた。拓海は私の家から少し離れたところに住んでいたようで買い物に行く場所は同じだった。私が何かいう前に電車の切符を買っていただけじゃなく、着いたらいつも買ってるんだろう店までスタスタと歩いて行く。店の中で服を選んでは聞いてくる。私の感想を。いいのかな? 私の好みを出しても。拓海が聞いてくるんだからいいよね?

「うーん。そっちよりこっちかな」

 なんて……ん? デート用のってなんだったの? たいして今までの服と変わらないチョイスなんだけど。夏服新しいのが欲しいだけだったの?

 結局三着お買い上げ。夏服欲しいかっただけだったね。それにしても、拓海は気軽に支払いしてる……類は私の母が無理やり私も一緒に連れて行って本人の意思に関係なく買ってた。支払いを気にする類に母はこれが私の楽しみなんだと本当に楽しそうに類の服を選んでいた。一応、自分の趣味には不安があったのか私を連れて行ってたんだけど。私も楽しかったし、嬉しかった。自分の好みの服を着てる類を見れるから。拓海の謎は深まるばかりだよ。


 今度は私の番! んー、悩む。拓海のように行きつけのお店があるわけじゃなく、お! いい! って思った店に入っていつも服を買うんだよね。どうしよう。いろいろ考えてたら店すら選べない。

「決まった店ないの?」

 拓海はついにしびれを切らして聞いて来た。

「うん。あちこち服を見てから、いつも服を買うから店は決まってないの」

 そこからは怒涛のごとく拓海の

「これは?」

 と、あちこちのお店で見つけた服を勧めてくる。どうやら拓海の好みは可愛い服のようだな。この拓海の選んだワンピースもそうだけど。

 というわけで、私は明日着る一着でいいのに四着も買ってしまった。ついつい拓海の好みの服だと思うと買ってしまう。しかも拓海ってば勧めるのをやめないんだよね。楽しんでる? 男の人ってこういうの嫌いだと思ってたんだけど。

 あちこち歩いてる合間にご飯も食べた。久々の外食だなあ。私ってば、ずっと拓海の手料理食べてるな。

 休憩にお茶もする。これってやっぱりデートっていうんだよね。普通は。周りにいる人を見ても男女でいればそう見える……しね。

 拓海のおしゃべりは続いてる。なんで電車の中であの時、無口になってたんだろう。


 帰りの電車でへばる私。

「疲れたー。歩けない!」

 そういえば、一日中買い物ってしたことないな。服を探してウロウロしなかったな。今まで。適当にウロウロしていい服がなかったら帰ってた。

「樹里、体力ないな!」

「拓海は元気だね」

 拓海、どこから来るのその元気。

「そりゃあ、バスケ部で鍛えてたからな」

「バスケ部だったの?」

 もちろん私は拓海に前の学校でなんのクラブに入っていたかも聞いていなかった。

「え? ああ。こっちきて、すぐに引退だから先生の入部の誘いを断ったんだけど、健太郎がうるさいんだよ。最後の試合出ないかって。いきなり入った奴に最後の試合のレギュラー渡したい奴いないからな、誰でも。敵つくるの嫌だしなあ。」

 え? あっさり部活の話もしてる。いいの? 最後の試合とか……出なくって……。

「レギュラーとる自信ありありな発言だね?」

「だって三年の人数が試合するのに足りてないからな。三年で最後の試合なら当然だろ?」

 人数の問題だったのね。実力云々じゃなくて。

「なにそれ! 二年に恨みを買いたくないってこと?」

「二年も三年も残りの学校にいる時間は一緒だろ?」

 確かに……一緒だね。そう、あと残り少ない時間なんだ。高校生をやっているもの。こうやっているのも。


「樹里?」

「ううん。それで吉田君と仲良くなったんだ」

「さあ? 樹里のことじゃないか? ほら友達の彼氏なんだろ? 健太郎?」

「ええ! そこ?」

 果歩どこまで私が心配なんだ? 吉田君に何を言ってたんだよ。

「樹里って……」

「言葉を失わないでよ! いろいろあったの!」

「ふーん」

「そう、ふーん。なの」


 全く果歩め! 心配しすぎだよ。でも、させたのは私だ。そして、また心配されそうな事態を作ってる私。この恋も苦い結末を迎えるんだね。

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