第17話 大丈夫になる
ご飯を作ってる拓海を見ながら話をしてる。拓海は相当友達作りが上手いようだ。次々に名前が出てきて同じクラスになったことない子がほとんどだったから誰が誰か混乱してる。いちいち外見や特徴を話してくれる。拓海の話は面白い。そりゃあ、友達たくさんできるな。私も話をしたいけど、触れてはいけないところがまだわからないから、なかなか出来ない。なのでほとんど聞き役。
果歩のラブラブぶりを話す程度。そういえば果歩の彼氏は拓海と同じクラスだった。あんまり言うと怒られそうだな、と、思っていたら案の定果歩の彼氏ももう拓海と友達になってた。
これは……もしやお昼の一件も話をしてたりして……。
「ねえ。吉田君に昼の話をした? 吉田君、果歩の彼氏なんだけど……」
「え? いや、聞かれたけど答えてないよ。なんで?」
はあー。セーフ。
「果歩に話をしてたから」
「なんて言ったの?」
言いにくい……けど。男の子がそんなにこだわるとは思えないし、果歩が話をしてたら……それはそれで逆にマズイか。拓海になんと伝わるかわかんない。
「ヤキモチ」
「え?」
「私がヤキモチ妬いたって言ったの」
「ふーん」
向こう向いて料理中なんで顔は見えないけど、絶対笑ってる。今のふーんは!
「なによ! あの状況、説明他につかないでしょ?」
「ふーん」
もう! 肩も揺れてるし、ふーんはもはや笑い声に聞こえるよ。
「何に?」
「え?」
「何にヤキモチって?」
「言ってない。内緒って事にした。話を作るの難しいんだよ」
拓海と吉田君が繋がったならこれからもっとややこしくなるな。
「じゃあ……」
「じゃあ?」
なんだろ?
「いや。これからは気をつけて話をしないとな」
「そうだね。果歩と吉田君は話が繋がってるって考えた方がいいからね」
「そうなんだ」
「嫌になるくらい、仲良しだからね。今日も部活引退したら一緒に受験勉強するってウキウキなんだもん」
あ、しまった。部活引退とか受験勉強とか……拓海の状況わからない。部活一生懸命してたのにもう諦めてしまったのかもしれないし、受験するかもわからない。類の場合はもう大学行ってたからそのまま続けたけれど……それも父がかなり説得して大学生を続けさせたみたいだった。この状況で大学受験するとなると……。
「そっかー、そうなると樹里と毎日受験勉強しにここに来てるって話もそのままできそうだな」
「へぇ?」
「話だよ。作るより真実に近い方がいいだろ? 受験に向けて勉強しに来てる。うん! いいなこれ。さすがに飯まで一緒に食べちゃまずいからな。でも、そこまでは話できるな」
……え? 受験生になるの? 拓海の状況がまるでわからないよ。まあ、いいことか。……ん? 本当に受験生になるの? あ、でも受験しなかったらすぐに学校でバレる……と、そこまでこの学校に拓海がいるかも疑問なんだ。ああ! 聞きたい。けど、聞けない。類みたいな話だったらこの先普通にできないだろう。拓海が。類はそうだったから。
「樹里?」
「ああ、うん。そうだね」
***
いろんな拓海の過去をそして未来を考えてたら、また寝坊したみたいだ。目覚めると拓海の顔があった。しかもなんだかすごく顔が近いんだけど。なんかいたずらしようとしてたのか?
「おはよう」
「あ、うん。おはよ」
うう、朝からダメだ! へこたれる。寝起き&寝顔を見られたのと間近で朝から好きな人の顔を見たことでへこたれる私。
明日から頑張って起きよう。別の意味が大きくなる、私の決意。早く起きよう!
*
「樹里! おはよう。今日は大丈夫?」
果歩……ある意味大丈夫ではないけど、どの話も拓海との同居の話になるんで何も言えない私。いや、その前に寝顔見られたとかはヤバイでしょ?
「おはよう。大丈夫だよ! なんで?」
「健太郎がお昼の後、安田君が沈んでたって言ってたから。やっぱりケンカしたんじゃないかと思って。でも、今朝は仲良く登校してるから」
え? 拓海が沈んでた? 嘘。あの拓海が? なんで? お昼に別れる時は普通だったのに。放課後だって。
「そうなの? 私と一緒にいる時は普通だったよ。きっとなんか別のことじゃない?」
「ならいいの。それ聞いて昨日のこと思い出して二人がケンカしたかと思って。樹里がヤキモチとかいうから」
「いや、あれは……最初のほら女子がワラワラいたでしょ? あれの事!」
あ、勝手に言っちゃった。
「ああ、あれはヤキモチやくね」
果歩遠い目になってる。そういえば吉田君もバスケ部でキャーキャー言われてるとかで、果歩がバスケ部観に行くようになったのもそのせいだったもんね。
「ね。でも、拓海には責任ないのに……だから気にしたのかな?」
勝手に拓海の話を作ってるよ、私。少し虚しいな。いや、かなりか。
「拓海って……もうそんな仲なの? 樹里!」
どんな仲なの? って拓海は私を樹里ってはじめから呼んでるけど、そこはスルーなの?
「どんな仲もない。果歩も吉田君の事、健太郎って言ってるじゃない」
「それは……そのだよ」
なんで果歩、自分の話はそんなに濁すの。
「拓海も樹里って言ってるから。深読みし過ぎ。っていうか心配しすぎ! 保護者じゃないんだから」
心配されてる以上の展開なんだよ。ごめん。果歩。
「だって、樹里って純情というかなんというか……」
はいはい。バカな小娘ですよ私は。
「もう大丈夫だって」
そう、大丈夫。私はもう大丈夫。決めたから。大丈夫になるって。
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