夜行獣Ⅰ~晩夏編~

齊藤 鏤骨

概要

 あかい空にあおい太陽が昇るさかしまな世界。

 この星、惑星ニュクスに住まう三つの種族は日中の致死光線を避けて長い夜を生きてきた。

 微細な地球外生物を血潮に取り込み、独自の進化を遂げた輝く金目や銀目の瞳を持つ交雑者ヌーク。

 ナイトヴィジョンを装着し、地下で息を潜めながら色のない世界を生きるふるき人類の末裔コーダ。

 そして、あらゆる可能性を秘めたキメラとして産み出され、人ならざるものとして滅ぼされた黒い眼のケスの一族。

 ヌークの最大部族であるウズリン族の若き指導者ファディシャは、新しい人類の揺籃ようらんである巨大な峡谷ダール・ヴィエーラの覇権はけんを握りつつあった。

 ケスの生き残りの少年イムナン・サ・リと少女ルー・シャディラは、それぞれ強大な力を秘めた魔術師と巫女として人々から恐れられる存在となって成長する。腹心と正室、共にファディシャに仕えるものとして再会したふたりは互いに惹かれながらも、双方の思惑の違いから憎しみ合う。

 ファディシャの妹ゲイルは純真さと魔性を併せ持つイムナン・サ・リに淡い憧れを抱きながら、ある狩りの夜西タルー族の若者ナビヌーンと出会う。

 一方、コーダとヌークの混血種族のおこした商都タルクノエムでは、イムナン・サ・リの異母兄でもある執政官イルラギースが稀代きだいのカリスマ性と卓越した政治手腕で欲望と陰謀の渦巻く魔都の全権を掌握しょうあくしていた。


 再び空を取り戻し世界を再生するプログラムは、最果ての離宮で夢見るサイラスの不死の皇帝レィヴンの機械の脳のなかにあった。

 この世界は果たして救うに値するのか?

 光と闇、善と悪との狭間で揺れ動きながら、それぞれが動き出す。

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