第6話 『問題ないよ』

 霊彦たまひこ達が森を散策している頃、二人のいなくなった神社には六人の男女が集まっていた。


 「行っちゃったわね……」


 そう話すのは山川 七海ななみ神生かなの母親である。


 「そうだな……」


 その言葉に答えたのは山川 信治しんじ、こちらは父親である。


 「…心配かい?」


 そう問うのはこの神社の神主にして霊彦の父親、森海 弘太ひろた


 その言葉に神生の母親、七海が返答した


 「そうね……でも霊彦君がいるなら安心よ」

 「それはどうも」


 そう言って笑う二人、その様子を見て阿須波の母親、森海 独代ひとよは呆れ顔になって言った。


 「子供がに飛んでいったってのに随分と気楽ね、七海」

 「いいじゃない、んだから」

 「そうだぞ、ヒト。もっと気楽に考えろよ」


 『ヒト(人間のことではない)』、と相性で呼びながら反論してくる旦那に呆れ顔になりこれ以上何を言っても無駄だと悟ったのか静かになる独代三十代後半ひとよ三十路末期


 そんな会話を見て、除け者にされている気分で不満そうな顔をして話しかけてくる人物が二人の男女がいた。


 「何のんきに言ってんですか、生徒を異世界に飛ばされる身にもなって下さいよ

  ー」

 「そうだよひろちゃん、国民一人一人が大切なんだからな」


 前者の女性の名は田中 優香、発言から察しられた方もいらっしゃるとは思うが、霊彦と神生の教師、担任である。


 そして後者の霊彦の父、弘太ひろたをあだ名で呼ぶ男性は大山 幸大こうだい、弘太の同級生にして異例の若さで内閣総理大臣となり、現総理大臣の男である。


 「俺だって好きで飛ばしたわけじゃないんだからー……怒んなよ二人共」


 どうやらこの男、妻の存在を忘れているようだ、背後には黒髪三十路の女が立っていた……

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