Strange・Ace

琴野 音

第一章

プロローグ その背中

僕は、目の前で繰り広げられる壮絶な闘いに身体を震わせながら、頭の隅で思い出していた。


ある映画で言っていた。ダンサーにとって靴は『鎧』であると。


では武器は?


その疑問は、たった今解消された。


僕は確信した。武器とは『音』だ。


お互いのオーラを削ぎ落とす槍。


チームで作り上げた壁をぶち抜く大砲。


会場が波のように熱気を上げ、それを上手く操ることで津波を起こす。


それに飲まれないため、反撃の一打を投じる。


汗だくの身体で、何も持たずに闘う。


それはまさに戦争だった。


音に合わせて身体を動かす。それだけのことで、この凄まじい激動を生む。



「これが、ブレイクダンス!!」



ダンスの世界とは無縁だった僕が、ダンサーを目指すことになった、ある夜の話だ。

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