works/1177354054880269422

『読者を探せ』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880269422/episodes/1177354054880269737


 読者の不在をアイデンティティとするテキストというものは、特別に稀な物ではない。日記帳でも絵馬でも便所の落書きでも、識字率が高い国ではそういった試みに興じる者も少なくはない。読まれないことを根底に置いたテキストをインターネットに公開する理由は、WEBシステムのデモサイトや旧態依然のSEO、部屋に置いた手帳が半年以内に必ず消失する呪いへの対策を除けば、漠然とした虚無感への抗いとされている。そこには自己顕示や、文化貢献の積もりなどは特になく、単に、無への恐れしかないのだ。

 無為に時を過ごす事が可能な立場にありながら、それを嫌い、完全な無を否定しようとするも、否定に足る成果がなく、それでもその生きた証を残さずにいれば気が狂う。人の身が受けた呪いを、端的に綴る掌編。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る