猫が解決 探偵事務所

桜雪

第1話 猫 月に行く

 身体が大きくて臆病な『クロさん』

 小さくて好奇心旺盛な『チョビさん』


 とある事情で、ニンゲンに拾われました。

 毎日は退屈で…眠れば朝が、起きれば御飯が約束されている。


 月を視ながらニャーと鳴く…。

『退屈ならばこっちへおいで…』

 まん丸い月がキョロッと2匹に話しかけた。

『猫の街へ遊びにおいで…』


 チョビさんが聞く

『どうやったら行けるの?』

 クロさんが止める

『やめようよ…』


 空から光が窓に差し込む。

『その道辿って、こちらにおいで…』


 チョビさんがピョンと道に飛び乗った。

『行こうよ』

 クロさんが前足で、チョンと道の端を触るとキロンと綺麗な音がする。

 2匹は、月へ向かって歩き出す。

 道はキラキラ輝いて、歩くたびにピカリと光ったり、キロンと音を響かせたり。

 じゃれ合いながら月へ着く。


『ようこそ、月の裏側へ。ようこそ猫の街へ』


 いつの間にか2匹は立ち上がり、2本の足で歩いてる。

『いらっしゃい マグロアイスをどうぞ』

 2匹は、マグロアイスを舐めながら、街を歩きます。


 色んなお店が立ち並ぶ商店街。


『気に入ったかい?』

 月が話しかけます。

『うん』

 チョビさんが頷きます。

『ここでは、お店屋さんごっこをして働いてるんだよ、みんなが』

『僕たちも、お店屋さんする』

 チョビさんが手を挙げます。

『うん…何屋さんをする?』

 月が聞きます。


 見回す限り、大方のお店は揃っているようです…。

 魚屋・肉屋・アイスにパン屋…居酒屋まであります。

 う~ん…う~んと腕組みしながら考える。


『何屋が無いの?』

 クロさんが月に聞きます。

『そうだね…この間まではあったんだけど…探偵が居なくなったね』

『たんてい?』

『あぁ…街の困ったことを解決する仕事さ』

『たんてい…ソレやるよ』

 チョビさんが目を輝かせます。

『そうかい…じゃあ、2件先のビルに空き部屋があるよ、ソコを使いなさい』


 空き部屋を掃除して…木の板に『チョビクロ探偵事務所』と辞書を引きながら一生懸命、書きました。

 看板を部屋の外に立てかけて、コレで探偵事務所の出来上がりです。

『疲れたね…』

『うん…疲れたね』

 2匹は丸まってソファで眠ります。


 目を覚ますと、いつものベッドの上。

 空には消えそうなお月様。

『好きな時にまたおいで…』

 ニャーと鳴いて、ベッドで丸まる。

 お月様のように丸く…丸まる。


 ちゃんと依頼はくるかしら…。


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