詩集『白い家』

一石楠耳

点字がわからない

「やあちょっと」と挨拶する迄に

バッタリと倒れ込む

迄の長い長い時間を

休日にして暮らしてみるのが良いんじゃないか

どうかなって僕が君に話しかけると


返事をした君が

最後に吐いた言葉は点字

やっぱりそうくると思ってたから

僕はその意味がわからない


じゃあねひとつ聞くけど

いつもニヤニヤ笑いながら

肩がブルブルブル震えているんだから君は

とても可愛らしいよね

うんとても


「やあちょっと」と挨拶する迄に

バッタリと倒れ込む

迄に花の香りを一息に吸い込む

迄に部屋のカギの閉め忘れを思い出す

……迄に

余っている遥かギャラクシーのような長い長い時間を

休日にして暮らしてみるのが良いんじゃないか

どうかなって僕が君に話しかける

迄の長い長い時間を

休日にして暮らしてみようかなって

君は点字で言った


肩をブルブルブル震わせながら

顔はニヤニヤニヤ笑いながら

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