6
「日紅(ひべに)。日紅の夢はなぁに?」
今にも眠りそうな微睡(まどろ)みの中、声が響く。
「ずっと一緒にいること」
日紅は毛布に顔を埋めながら答えた。
母親の膝の上、小学校6年生になったばかりとはいえまだ幼い日紅は甘えるようにきゅっと抱きつく。
「あらあら。それはママとかしら?」
「ママもだけど、あたし、せーくんと巫哉と一緒にいたい」
「本当に仲がいいわね、あなた達。今度はミコヤくんも連れてきてね?話はたくさん出るけど私一回も会ったことないんだからね、日紅」
「ん…巫哉がいいって言ったらね」
「そうね。日紅のお婿さん候補だから絶対連れてきてね。ママおめかしして待ってるから。でも犀くん以上に日紅のこと想ってくれてるかしらね~?」
「巫哉は優しいよ。日紅がなくしたもの持ってきてくれたり、泣いてるときれいな所に連れて行ってくれたりするもん。意地悪だけど…」
「ふふ。日紅には二人もナイトがついているのね。幸せ者ねー日紅」
「うん二人とも大好き!あたし、大きくなったらおっきーい家を買うの。そこで、三人で一緒に暮らすの。美味しいもの食べて、いっぱい一緒にあそんで、ちゃんとお店屋さんもするの。お花屋さんもやって、おっきくなるまでずーっと一緒で、おっきくなってからもずーっと一緒なの」
「ずーっと一緒なの?」
「うん!死んじゃう時までずっと一緒にいるの。巫哉は長生きだから、巫哉にあたしとせーくんのお墓をつくってもらうの。それで幽霊になって出てきて時々遊ぶの」
「それが日紅の夢?」
「うん…」
日紅の母親は日紅のふわふわの癖っ毛を優しく撫でつけた。
「きっと叶うわ」
ケーキ屋に寄った帰り道、日紅と犀はもう大分暗くなっている公園に寄った。
「犀さま御馳走様でした」
ブランコに座った日紅が、同じように横の滑り台のスロープに座った犀に手をあわせる。
「いえいえ日紅さんの胸に肥料を与えたと思えば安いものです」
「せ~い~く~ん~?」
「あ、それともお腹かな?」
「こらっ!」
日紅は足元の砂を掴むと犀目掛けて投げつけた。
「おわっ!ペッ!口に入っただろ!すぐ手が出る癖やめろよなー」
犀は立ちあがって口を拭うと日紅に歩み寄ってその頭を軽く小突いた。
「痛!脳震蘯(のうしんとう)だわ慰謝料」
「今のはただのスキンシップです~」
カシャンとブランコが軋んだ。日紅はブランコごと犀に抱きしめられていた。日紅は赤くなった。
「慰謝料とられるんならこれくらいじゃまだ甘いか?ん?」
「…参りました」
に、と犀は笑った。どうやら日紅だけではなく犀も少し照れているようだった。耳が少し赤くなっている。
「日紅」
「なぁに?」
「月夜(つくよ)とあんまり仲良くすんなよ」
「やだ」
「やだ、っておまえなぁ…つーか即答かよ」
「やなものはヤ。大体理由がわからない」
「…日紅さん。質問です。あなたは誰の彼女ですか?」
「木下犀さんです」
「正解です。その木下犀くんはやきもち焼き~です。だから彼女の山下日紅さんに他の男と仲良くしてほしくないそうです」
「…ってあははやだ犀、巫哉だよ!?巫哉にまで嫉妬するの?もう家族なのに!弟みたいなもんだし」
「その爆笑で日紅にとって月夜が対象外だってのは十分わかったが、まぁ俺もつい昨日までは同じこと言われてただろうし、おまえがそうでも月夜の方はどうかわからないだろ?」
「巫哉なんてもっとあたしのこと対象外だって!だって考えても見てよ!巫哉あんなちっちゃいのに4000年は生きてるお爺ちゃんなんだよ?ありえないよー。それに見た目中学生だし。あたしが手を出したら犯罪よ~」
「…」
犀ははぁとため息をついた。
「とりあえずあんまりべたべた触んなよ」
「はーい」
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