第3話 日常

ーーーーーーー


ーキーンコーンカーンコーンー


ーガラッ!


「せーんぱいッ!」


「ゲ…!佐伯…またお前か…来んなっつったろう!」


授業終了のチャイムが鳴り、昼休みに差し掛かろうとしたまさにその時、少し高めの声が矢崎十夜(やざきとうや)を捕まえた。


思いっきり顔をしかめ、声の主・佐伯悠斗(さえきゆうと)を一瞥する。


「わ、ひどぉい!悠斗泣いちゃうッ」


悠斗はわざとらしく顔を手で覆い、しくしくと泣き真似をする。


「…勝手に泣け。そして男の癖になよなよしい声を出すな、気色悪い」


「もー照れちゃって、そんな先輩も好き!」


「…はぁ…」


げんなりとした表情でため息を一つ。


いつもと同じ事の繰り返しに少々慣れを感じつつも、十夜は今日も事務的に言う。


「…良いか、いつも言ってるが俺は今から飯を食うんだ、お前に構ってる暇はない」


「あ、それならオレ先輩の分も作ってきたから一緒に食べましょう!愛妻弁当ですよ」


「…毎回毎回女々しい事してんじゃねぇよ。それに誰が愛妻だ、誰が」


「オ・レ!」


「………」


「あれ、声も出ない程嬉しいですか?」


「誰がじゃボケェイッ!」


思わず十夜のキャラが壊れるくらい前向きな悠斗。


クールが売りな筈なのに嗚呼可哀想。


否が応でも突っ込んでしまう自分に凹んでみる。


(…俺、何やってんだろ…)


心の声も虚しく、今日も悠斗に振り回される運命だったり。


…ご愁傷様です。


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