第三夜 もしも時間が戻せたら

左様でございます。簡単に申せば、時を戻すボタンです。


時を戻す!?


如何にも。これを作り上げた時間物理学者は既に他界しております。

彼はこのボタンを人に託すにあたり、人の役に立つ様に使われるを事を強く望んだそうです。

その後、幾人かの所有者を経て、私共の関係者の手に渡り、開発者の高尚な遺志を汲み取りつつ、我々の厳重なる管理下の元に運用する事に至ったという訳です。


ふうん。にわかには信じがたい話だが、取り敢えず全て聴いてから感想を言うよ。


結構です。元来このリセットボタンを押した場合、やり直しの効く時間の選択肢の幅はあまり有りませんでしたが、我々のエンジニアの手により若干修整が加えられ、使用者が実体験済みの1年以内の過去であれば、望み通りに時空間移動が出来る様になりました。


で、僕に何をさせたいんだ?


何も。


何も?


ええ。私共は強要は致しません。あくまで機会を提供するだけです。押すか、押さないかは貴方様のご判断に委ねられます。


何故この僕を選んだんだ?




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