secret track-もう1人

ずっと頭にかかっていたモヤが晴れたような感覚だ、しかし身体に蓄積したダメージは俺が思い通りに身体を動かす事を阻害し続ける、このままでは行き倒れだ。


「やっとうたたPの呪縛から解き放たれたというのに、無様な姿だ」


目の前から俺自身の声がする、顔を上げると俺とまったく同じ顔をした男が立っていた。


「お前は……」

「オリジナルだよ、君のね」


街灯に照らされた俺の顔が冷たく笑う、背中を氷水が伝うような感覚が襲う、あの幸福に狂った少年とまた別のベクトルの恐怖、得体の知れない恐怖だ。


「君は僕のドッペルゲンガーだ、君はよく頑張ったよ、でも用済みだ」


ガクンと、視界が揺れる俺はその場に膝をつき、それでもなお彼を見つめ続けた。


* * * * *


「さーて、これからどうすっかなぁ」


目の前で塵となって消えた自分を見届けた俺は、彼の記憶が流れ込むのを感じ取りながら呟いた。

厄介な世の中になったなと、ため息をついて歩き出す。


「なりゆきを見守るか、あのガキに報復といくか……」


まぁ、今はこの自由を楽しむとするか。

俺は自分が作った歌を口ずさみながら、夜の道を1人歩いていった。

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