☆源氏の世界 ⑧貴族の一日 

 さてここまで源氏物語をすすめてきました。物語の大半が源氏の恋物語なのですが、源氏くんももちろんお仕事をしています。貴族としてね。

 じゃあ貴族はいつどのようにどんなお仕事をしていたのかなと調べてみました。


 まず朝はとっても早いらしいの。

 出勤前にお粥のような軽食を食べて、身支度をするのね。髪梳き、爪切り、数日に1回の沐浴って書いてあるわ。

 朝食と身支度をするのは今と変わらないんだけど、この他に昨日の日記をつけたり、暦や占いで今日の吉凶を占ったり、仏や神を念じたりする習慣もあったみたいだからお出かけ前に結構時間がかかることになるわね。


 それから宮中に出勤になるんだけれど、門が開くのが夏至のころが午前4時30分、春分・秋分の日あたりで5時40分、陽が昇るのが一番遅い冬至で6時40分ごろだったんですって。それから仕事の支度をしたりして、夏場なら5時半くらいから、冬場でも8時前には勤務開始になったみたいなの。それから3~4時間がお仕事の時間。これが「通常勤務」ね。そして当時もシフト制だったみたいで、午後のシフトや夜のシフトもあるのよね。いわゆる「時間外勤務」。時間外勤務のみはなかったみたいなので、午後シフトの人は午前から午後まで、夜間シフトの人は夜間から午前までが勤務時間だったみたいね。

 源氏物語で有名な<雨夜の品定め>(第2帖 空蝉)は宮中での宿直とのい(夜勤)の最中の男子の恋バナ大会ですもんね。

 休暇もあったみたいだけれど、1か月に5日程度っていうから週休二日制の今よりハードな勤務形態なのかしら?


 今でいうところの地方からの申請への対応、職員の勤務評定や人事、飢饉・疫病・反乱・戦争などへの対策、法の整備などの政治的なこと以外にも、年間を通じての宮中行事や祭祀などを執り行うのも殿上人てんじょうびとのお仕事内容だったみたいね。

 お仕事なのでね、意見が対立することもあるだろうし、人より出世しようとして水面下で工作をすることもあったでしょう。


 源氏の第十七帖絵合えあわせ(【超訳】源氏物語episode17 世界にひとつだけの)で描かれたのは表面上は風流な絵のコレクション対決なんだけど、本意は源氏と権中納言(頭中将)の権力争いなのよね。それぞれの娘(養女)を帝に入内させてゆくゆくは中宮(皇后)に選ばれ、できれば男子を産んでほしい。ゆくゆくはその子が帝になる。そうすればいずれは帝の祖父になれるし、自分の地位も確立される。

 そんな野望はまったく表には出さずに娘を想う父を装い、帝の好きな絵をお披露目するという形で華やかな行事にしてしまう。優美で雅な催し物に潜んでいる思惑や野心を垣間見るとちょっと怖いような気もするわよね。

 

 そして源氏と頭中将はどこまでいってもライバルなのよね。ふたりとも十分に成功しているし、周りにも認められているし、出世もしているんだけれどね。まだまだ上を目指したいのかしら? ライバルのアイツには負けたくないってところなのかしらね?


 さっき日記をつけるのが朝の日課だってお話したんだけれど、こうした宮中行事や祭祀をどういう手順でどういうしきたりで行ったのか、人事や政治的な対応もどう行ったのか細かく日記に残して翌年やその後や子孫にも参考にできるようにしていたみたいね。おかげで千年後の私たちもどんな生活を送っていたのかを教わることができます。


 そんな勤務の合間(えっ? 合間???)やら勤務の終わった後に皆さんいそいそとデートに出かけるわけです。あっちやこっちのカノジョに今日は行くからね、とか昨日の夜は楽しかったね、なんて恋文ラブレターを贈りながら。えっと物忌みや方違えは大丈夫かな、今日は誰と約束してたんだっけ? い、忙しそう……。


 そしてやっぱりこのギモンにいきつくのです。




 ……、いったいいつ寝るの?



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