ヤクザ
和室にずらりとスーツの男が並ぶ。
古びたジャパニーズアンティークテーブルを前に微動だにしない。
ボスと思しき一人の和服男。その顔は30代か。シワ一つないさっぱりした顔。しかし表情の作り方と手の節が年齢を物語る。見た目どおりの年齢ではない。貫禄が隠せずにいる。
「で、
わずかに掠れた声もその刻んだ年月を浮かび上がらせる。
そしてその一言だけで。
まわりの男達に緊張が走る。
「は、例のシノギは順調に……」
「ちげえよ。聞きたいのはそれじゃねえ。組のまとまりの話だ」
「お前の子分たち、ずいぶんとしつけがなってねえじゃねえか」
ボスの言葉を受け、隣に座る老けた男が若頭と呼ばれた男に凄む。
若頭はその不機嫌を隠そうとせずに。
「若い衆はよくやってくれてますよ。それこそ死んだ兄弟の分まで」
言葉の外に「古参のお前達が邪魔したけれどな」と意味を含ませる。
「やめねえか。おまえらの不始末は俺の不始末になるんだ。どれだけ顔を潰しゃ気が済むんだ?」
静寂。
「俺も言いたかねえんだがな。相談役、お前さんも控えろや。考えなしにとまでは言わねえが内輪でごたついてる場合じゃねえんだよ」
きょうびのヤクザは金を稼いでナンボ。それでのし上がった若頭といまいち稼げていない、相談役を筆頭とする古参連中が対立するのも無理はない。
「うちの組も
言葉だけでなにもしないお飾りが言いやがる、と思いつつもそれを隠し。
「例の件は手打ちにしましたし、以降は一切もめてません。実用化の目処も立ってます。売り込み先も……」
「なら
相談役が引っかき回す。
またも静寂。
数秒後。ため息。
「売り先はミハマだったな?」
「はい」
「この件は前に決めた通り、若頭に一任だ。お前の会社がきっちり仕事したらそれで済む。相談役、お前さんも協力して事に当たれ。文句はないな?」
「「はっ」」
この時ばかりは若頭と相談役の声が揃う。二人が頭を下げたまま。ボスが部屋を出て行った。
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