天の眼
衛星画像を受信した。
よーし、上は見るなよ。衛星画像はハイジャックされてると思え。十分ごとに帽子と上着を交換。
情報屋の指示が飛ぶ。
「戦闘の最中に着替えなんざできるかよ!! 今まさに撃たれてるんだ!!」
マイクに向かって吠える。
「元気のいいこった。答えられるなら生きてるじゃねえか。
なんでもできると思うなよ。こっちは戦闘屋とのやりとりのまっただ中だ。さっき撃ち落とされて爆発したドローンの映像が脳裏にちらつく。
「
なんでも屋が忠告してくれる。
なんてこった。このままじゃどこに隠れてもすぐにバレる。
「オーケィ、そっちの車両の陰に入る。あいだをつないでおいてくれ」
「あいよ」
空電ノイズが入り、直後にバリバリと射撃音があちこちから響く。金属に鉛がぶつかる音が中華街の祭りのようだ。
低く走って滑り込む。そのまま転がり、トラックの下に。上着の紐を引いて衣装交換だ。
ボディアーマがバラけてその場に落ちる。どうせ着込んでた所で頭を撃たれりゃ同じことだ。半分諦めながらカーゴパンツのポケットからパーカを出してごそごそと這いずり回る。フードを被ってARグラスを装備しなおす。
ロボ兵士の視界が見える。親指を擦るジェスチャーでその画像を小さくする。
何分たった? 潜入屋はまだか?
「ヤンキーリーダー、なにかトラブルか?」
情報屋が尋ねる。
「トラックの下が狭くて着替えに手間取った。アーマーはそのまま廃棄していいか?」
すこしの間が開いて。
「その場に廃棄よし。30秒後にそのトラックを爆破する。目くらましと証拠隠滅だ。ついでに脱いだ上着に燃料をかけて置いておけ」
その声を聴いて急いでトラックから這い出る。次のカバーまで5メートル。
親指を擦り、衛星画像に切り替える。幸い、こっちを向いている敵の戦闘屋はいない。
片手でアスファルトを
「カバーに入った。次はどうする?」
「ウォーキングタレットどものFCSをハックしてる最中だ。ガンガン撃たせてデータを取らせろ」
「撃たれるのは俺じゃねえか!!」
「ロボ兵士を使え。HL4のコントロールをそっちに回すから遠隔義体代わりにして暴れろ。五分もたせればそれでいい」
使い捨てとは贅沢なもんだ。現役の頃にそれで働きたかったぜ。愚痴をこぼすとそれに答えて。
「どうせ再利用しない前提のヒシイ量産型だろ。ダースで提供されてるんだ、ケチって死んでちゃ意味ねえぞ」
まったくもって同意だね。
違法駐車を偽装して駐めておいたクルマの蔭に身を隠し、貼り付けた神経接続のコントロールをオンにする。指先のゼスチャーで視界はHL4号機のカメラとリンク。
第二ラウンドの始まりだ。
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