ビジネスホテル
その無骨なビルは防犯カメラの
ネットで予約し、
現地に着いたらチェックイン。ちらつく蛍光灯と
部屋のドアも端末を
端末なら最悪でも壊して捨てるか燃やすかすればいい。しかしIDチップだといざという時には手首を切って取り出すか金を払って書き換えないといけない。適当なIDを書き込んだカードを用意すればよかったが後の祭り。それに非埋め込みIDチップや偽造IDタトゥプリントの使用は非合法だし扱う業者も少ないから金がかかりすぎる。
部屋についたら
シャワーやトイレとランドリー、食堂代わりの自販機はフロア
だが一度ホテルの内部に入ってしまえばどうとでもなる。まあそこら辺は
一泊分の会計は済ませてあるが、ここから最低で一週間は身を隠さないといけない。部屋から一歩も出ないというわけにもいかないのでシャワーやランドリーくらいは利用するが、建物の外には出ない。
端末がオフラインなので新しく手に入る娯楽は何もないが、見つかって殺されるよりはマシだ。一週間分の圧縮食料と水、着替えはバッグに入っている。
初日はシャワーを浴びて安いビールもどきを飲んで寝てしまう。
朝起きてドアのロックを確認。食事ともいえないレベルの栄養を取り、持ち込んだ端末とARヴィジョンで本を読んだり映画を
たまには街でなにか
十日を過ぎた頃。昼と夜との感覚も曖昧になってきたあたりでフロントから荷物が届いたという通知が
青白い光の中、血や吐瀉物で薄汚れたコンクリ
壁にスプレーされた案内のステンシルに端末を押しつける。壁の一つにランプが光り、赤いラインがコンテナまで案内してくれる。
壁に並んだ透明ポリカーボネートの扉。指示された扉の中にはダンボール箱とそれにマスキングテープで乱雑に貼り付けられた封筒。端末を操作すると扉のロックが外れる音が響く。
箱から引き剥がした封筒を懐に入れ、ダンボール箱を担ぐ。ドローンは折りたたんでバッグの中だ。適当なフロアに移り、手近なドアに端末を押し当てる。数秒後にはドアが開く。
技術屋に頼んで作ってもらったロックブレイカーだ。利用者がいない部屋ならどこでも架空の人間が借りた部屋ということにできるらしい。
机にダンボールを置くと懐に入れた封筒を天井のライトに
ダンボール箱をあけて
シャワーを浴びて部屋に戻ると、
これが俺の新しい顔か。
ありきたりと言うほどでもないが、特徴的とも言えない程度の顔。ニホン行政政府に所属する国家群の国民、その平均的な顔データから作成されたデザイン。イケメンでもないがブサイクでもない。印象に残らない顔だ。
手首から先をキューブに押し当て、再びスイッチに触れる。今度は掌紋と指紋の書き換えだ。皮膚が引きはがされ、新しい皮膚がプリントされていく。数分待って反対側も書き換える。形成され、固まったらパターンを確認。掌紋や指紋がちゃんと固定されているのを確かめ、同時に手首のIDも書き換えられていることも確認。キューブのスイッチに数回連続して触れる。
キューブから煙が上がり、あわてて換気扇を回す。ファンの音と共に煙が吸い出される。熱が冷めるのを待ってダンボール箱に戻す。インボイスと封筒は灰皿代わりの缶の中で燃やす。
バッグの中の未使用服に着替える。バックパックもポケッタブルの新品に交換。チェックイン時の服など不用品をキューブと一緒にダンボールに詰め、ダストシュートに突っ込む。
OK、これで待ちを
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