第3章 4歳児、悪役令嬢を助ける
プロローグ
ここから見ていても、彼女の顔が青ざめ、引きつったのが解った。
その彼女の正面に、縦ロールの見事な巻き髪を持った背の低い金髪の少女が立ちはだかった。
「まだ、何かする気ですか? もう十分じゃないですか? 一体、彼女が何をしたと言うの!」
そう指さすのは彼女の後ろに立つ、まっすぐストレートな黒髪を持つ色白の美しい少女だ。いかにも薄倖そうな雰囲気は、護ってやりたいと男心をくすぐる。
「何とかいったらどうです! あなたのせいで学院は滅茶苦茶なのよ!」
「そうだ、そうだ!」
そして、3人を囲むように、学生達の輪が拡がっていた。100人以上は集まっているんじゃ無いか。
「確かに、男爵令嬢と、公国の公女たる貴女とは身分が違うわ。でも、ここでは同じ学生という身分のはず。そうは思いませんか? 皆さん!」
そう言って、金髪の少女は周囲を見回す。
「男爵令嬢が可哀想だ!」
「一体、何の権利があって、彼女の心を踏みにじむんだ!」
100人の人だかりが一斉に彼女を非難し始める。これじゃ、つるし上げだ。
そして、その群衆の中から、一粒の小石が飛んできた。
「っ!」
それは、彼女の額を掠めて、地面に落ちた。
直撃ではなかったものの、尖った部分が当たったのか、彼女の額に少しだけ血が滲む。
その様子に周囲の群衆は少したじろいだが、
「出て行け!」
そういう声がどこからともなく上がると、それはやがて大きな声となり、
「出て行け! 出て行け! 出て行け」
大きなうねりとなって彼女を襲った。
それでも −−
彼女は、静かに男爵令嬢を見つめていた。
唇を噛みしめ、青ざめた表情を浮かべながらも、目は静かに男爵令嬢だけを見つめていた。
しゃがみ込んでしまえば、逃げ出してしまえば……この場を凌げたかもしれない。だが、彼女のプライドが、意地が、矜持が、家格が、国が、教育が、彼女をそこに縛り付けていた。
その様子に、わずかに男爵令嬢の口元が上がった。
その瞬間、
僕はスンを抱え、様子をみていた屋上から飛び降り、男爵令嬢の正面に降り立つ。
「ひっ」
男爵令嬢の顔が恐怖に引きつるが、それは無視して、
「刀」
「ん」
これだけの言葉にスンは刀に変化した。僕は地面に落ちようとする、その
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