鱗と掌

どうして人間には柔らかい皮膚しかないのかとずっと思っていた。人間は知能には長けているが、それにしても弱すぎる。

動物のように硬い皮膚や、俺のような頑丈な鱗があれば、簡単に傷つかずに済むのに。さらに鋭い爪があれば誰にも負けない強さを得られるのに。


人間は弱い。自分で自分の身を守る術すらもっていない。

人間は柔い。ちょっと触れば簡単に弾けてしまう風船のように。


でも君が傷ついた時に気がついた。君を本当の意味で守るのは、俺の持つ鋭い爪でも、強固な鱗でもない。爪や鱗は自分自身しか守れない。


君の避けられない傷を本当の意味で癒すのに必要なのは、君を柔らかく包む掌だった。


このとき俺は初めて、人間になりたいと思った。

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