キスの味

ナースセンターで彼のお見舞いに来たことを伝える時が一番緊張する。

『今日は面会できない』とか、『今は集中治療室にいる』などと言われたらどうしようかと。

でも今日は大丈夫らしいので一安心。


病室に行くと、彼がベッドの上で起き上がっていた。

今日は元気そうだ。

お見舞いに行くと言ってあったので待っていたらしい。


「君が来る時に調子が良くてよかったよ」

彼が嬉しそうに言った。


「そうね」


そして私は彼にキスをする。

でも彼の唇はリンゴの味。調子が悪い時に飲む苦い薬の味を誤魔化すために彼がいつも飲んでいるジュースだ。


でもそれを問い正すことには何の意味もない。

私にできるのは、キスの後が悲しい顔にならないようにするだけ。

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