月に叢雲

灯りの消えた街路を歩いていると、急に辺りが暗くなった。

空を見上げると、雲が魚の群れのように月を飲み込んでいく。

雲に隠れ輪郭がぼやけた月。その儚さはまるで自分の未来のようだった。

自分が何者で、どこに行くかも分からないぼやけた未来。そんな暗い道を一人で歩くなんて怖くて出来ない。


月が隠れた暗い街で独り立ち尽くしていると携帯電話が鳴った。

耳から流れ込んでくるのは君の声。

僕が僕であるために僕が何をすべきか、僕の未来を明るく照らしてくれる君の声。

僕はパーカーのフードを被って、君の声が一つも溢れないようにと携帯を耳に押し付けた。

暗い道でも君となら。


いつの間にか雲もはれて明るくなった街を、僕は再び歩き出した。

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