第22話 2011年以前

在職中の狂気について書いていないことに気がついた。ドラマとしては、退職後が壮絶だが、狂気としては在職中の方がヤバいかもしれない。振り返ってみよう。

発病のきっかけは、1998年の左遷と単身赴任である。狂った。会社を早退し、小田急線の電車の中でパソコンをひろげ、クリントン大統領と電話会談。首脳気取りだ。不気味である。

様子がおかしくなり、通院したのが、1999年の4月。3月には頻繁にデートサークルに行っている。まともなサラリーマンが行くところではない。俺は狂っていた。

開発中のシステムにCIAが関心を持っていると妄想した。狂っている。

単身赴任。ワンルームマンションの7階。隣の電話がうるさくて、壁を蹴ったら壁が凹んだ。修理代10万円。払いましたよ。

911で、私の頭脳を世界へと妄想し、ホームページを立ち上げた。ビッグローブの鴎外5582。アナリストのための1日8分、というサイトだ。俺は発奮した。

反響はあった。ベーリングポイントの藤崎氏から寄稿を依頼された。銀座で寿司をご馳走になった。東京。お忍びで、SK氏の家に遊びに行った。戯曲の話もあった。そうだ、ドバイに行った蘇畑氏とも会った。飛んでいた。

何が黄金の40代だ。苦しんでいたではないか。それを書いちゃおしまいよ。わかった。

そう言えば、追われていると妄想して走ったな。遮断機をくぐり抜け、靴が脱げ、靴を捨てて家に飛び込んだ。バリケードを作ったな。2階から階段に本をばらまいた。次の日には入院したな。

世界選手権の招待状が来ると妄想したり、株主総会で役員になると妄想したり。どうなってたんだよ。そんな状態で、よく12年も会社にいられたな。不思議だ。

在職中に4度の入院。威張れることじゃないね。なんだったんだ、妄想は。

記憶も曖昧になってきた。もう、やめよう。

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