第479話 ダメダメ騎士で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
暗黒大陸になにかがありそう。
しかしながら、自分たちが居る場所より遥か遠くの大陸である。
クエストが発生しそうで発生しない。そんな状況になんだかなぁと、職場でもどかしく思う桜なのであった。
するとそんな所に――。
「あれ、ワーニング?」
異世界転移で水質管理センターに勤めるようになってはじめて、トラブルが舞い込んできたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
ワーニングの内容はすぐに分かった。
というのも、ワーニングの内容を読み解く必要もなく、後ろにいた上司があぁこれかと叫んだからだ。それは、既によく知られたワーニング内容だった。
「これね、水路が詰まると出るんだよ。だいたい水路のどこかで何かモノが引っかかっていてね。牛とか、ブタとか、そういうのが落ちたりしてるのが大概さ」
「はー、そんなもんなんですか」
「そうそう。ほら、そのよく分かんない道具に、黄色い文字で番号が出てるでしょ。それでだいたいどの辺りで水路が詰まったから分かるからさ――」
そう言いながら本棚から地図を取り出す俺の上司。
ふんふんふーんと鼻を鳴らしてそれをテーブルに広げると、ほら、ここと、番号の振られている場所を指さした。
水質管理センターのすぐ近く。
割と歩いて行ける場所だ。
てっきり、水質管理センターとかいいつつ、まったく仕事をしていないのかと思っていた。あるいは住人からつつかれて動いているのかと思っていたが、意外にも、彼らなりにこのPC〇8を使って頑張って活動していたんだな。
なんて思っていると、上司が俺の方を見ているのに気が付く。
いかにも期待するような視線に、俺は首を傾げた。
何かを期待されているのはよく分かるが――。
なんだろうか。
「という訳で、ちょっと様子を見てきてくれる、桜くん?」
「え、俺が見てくるんですか?」
「そうそう。いいじゃないたまには。デスク仕事ばっかりじゃ息が詰まるでしょ」
そんなことは別にないのだけれど。
まぁ、けど、いいか。
机に座っていても、悶々と、あぁでもないこうでもないと考え続けるだけである。気晴らしに外に出るのも悪くないかもしれない。
分かりましたよと言って、俺は地図を頭の中に叩き込むと、その何かが落ちているであろう場所に向かって歩き始めたのだった――。
◇ ◇ ◇ ◇
「もがぁっ!! もがぼごごぼこぶぼばら!! もがぁっ!!」
「ひ、人が、溺れている!!」
「ぼぼぼぼ!! ぼぼぼびぼぼぼ!! ばぶべべっ!!」
ワーニングの出ている場所につくと、そこは地獄絵図であった。
水路に落ちておぼぼおぼぼと声を上げる男。
黒い鎧を着こみ、黒い長髪をした男が、用水路の中に体を浸している。よっぽど重い鎧を着ているのだろうか。緩やかな川の流れにも関わらず、彼はそこから脱出できないようだった。
ちょっと深く、そして流量も多い場所だ。
足はついていない様子だった。
「もごごごーっ!!」
「だぁーっ、分かった、分かった、すぐロープ持って来るから!! 寝覚めが悪くなるから、死ぬなよ!! 頼むから死ぬなよ!!」
溺れる黒髪の冒険者。
長髪をしているがおそらく男。
異世界でなんてことない水路で溺れる野郎を助けるなんて――どんなイベントだと思いつつも、放っておけないのが俺である。彼を助けるべく、俺はとりあえず近くにある道具屋へと駆けこむのであった。
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