第416話 妖力補充で九尾なのじゃ

【前回のあらすじ】


 加代さん、正真正銘ののじゃロリ狐娘になるの巻き。


「いやむしろ、今まで実はのじゃロリじゃなかったってことの方が驚きでしょ。普通、のじゃのじゃ言ってりゃ、ロリだと思うよ。そういう言動とビジュアルの不一致ってどうなの」


「のじゃぁ……」


◇ ◇ ◇ ◇


「のじゃぁ。まぁ、わらわも妖怪じゃから、妖力が足りなくて縮むというのは、なんというかこうあってもおかしくない話なのじゃ」


「いやけど、いきなりロリ化されたら、こっちもびっくりしますよ?」


 朝食。

 俺と加代は向かい合って、いつものように――昨日スーパーで買ってきたおいなりさんと、インスタントの味噌汁(あぶりゃーげ)を飲みつつ語らった。


 まぁ、確かに漫画や小説でよくある展開だけれどさ。

 まだ若い妖怪が、妖力を保つことができなくて――とかさ。逆に、妖力を高めすぎてセーブするために――とかさ。

 漫画とかであってもおかしくない話だと思いますよ。


 けどあんたいい歳したオキツネじゃないか。

 三千歳生きておいて、いきなりロリ化するとかどうなのよ。

 あと、ここまで話をひっぱっておいて、いきなりロリ化するとかどうなのよ。

 もっと早い段階で、そういうのはするべきじゃないのか。


 なぜこの同棲編も極まって、いよいよネタがなくなって来たこのタイミングで――。


「マンネリが進みすぎて打ち切り寸前のジャン〇漫画みたいなテコ入れだな」


「のじゃ。そういうこと言うもんじゃないのじゃ」


 だっていきなりすぎるし、唐突すぎるし、脈絡なさすぎるし。

 はぁ……。


 冷えたおいなりさんを頬張りながら加代を見る。

 確かに大人の頃の面影はあるが、やっぱりガキンチョである。生意気な感じはしないし可愛げもあるけれど、なんというかこう――。


「違う」


「のじゃ」


「俺の愛した加代さんと違う。違うんだよ、俺はね、別にそういうのじゃロリとかそういう属性がある訳じゃないんだよ。いい歳してポンコツの加代さんが良かったんだよ。なのに、なんでのじゃロリに走るかな!! 流行に走るかな!!」


「走りたくって走ったわけじゃないのじゃ!!」


 確かに世の中にはのじゃのじゃ言ってロリロリの狐娘が溢れておりますよ。

 横を見ても、上を見ても、VRゴーグルの中を覗いてみても、狐耳生やした女の子が、のじゃって言ってますよ。そういうお時代ですよ。


 けどね。あえて、成人したロリっ気のない、貧乳の狐娘もいいと思うの。

 悪くないと思うの。

 それが俺の愛したオキツネなの。

 加代さんなの。


「なのにのじゃロリに走るなんて!! ノジャロリヨ、なんて!!」


「ナオミキャン〇ルのCMみたな感じで言うななのじゃ!! あと、そのネタもう古すぎて誰にも伝わんないのじゃ!!」


「そういう古臭いところも含めて、俺は加代さんが好きなんだよ!! 元に戻ってくれよ、古臭い貧乳アダルトオキツネ九尾に!! 戻ってよ!!」


「言い方!! ちっとも言われてうれしくないのじゃ!!」


 ちくしょう、性的嗜好がニッチ過ぎたんだ。

 そりゃ軌道修正がかかるのも仕方ないわ。むしろ、よくここまで大人の貧乳オキツネで頑張ったわ。


 ビジュアルが付いてたら大爆死間違いなしだったわ。

 まぁ、爆死も何も書籍化の打診もないし、ファンアートも来ないから、爆死する要素なんてなにもないんだけれどもね。


 メタい発言はともかく。


「加代さん!! とにかく可及的速やかに元に戻ろう!! どうすればいいんだ!! 俺にできることなら何でも言ってくれ!!」


「のじゃ。妖力バテじゃから、おとなしくしてれば治るのじゃ」


「そういうのじゃなくて――もっとこう特効薬的なものを!!」


「……あとはあれ、妖力を直接注入する感じの奴じゃが」


「ファテテテ、マリョクキョウキュウ、エッチチ、ボローン、ピンチビンビン」


 それはあかんよ、流石にあかん。

 ビジュアルがないからって、やったらいかん展開です。


 かくして、俺とロリ加代さんとの生活は、長引くことになったのであった。

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