こんな天気のいい日には
「ひょー今日天気いいね」
さんさんと窓から降り注ぐ日光の前に仁王立ちしながら
律と入れ替わるように音楽準備室に入った
「今日の予定は……いつも通りって感じかな」
「何時から合わせる?」
「んーどうしようかな」
午前はパートごとに教室に分かれて個人練習とパート練習、昼休みを挟んで午後から合奏。土日の練習はいつもこんな感じだ。
必要な楽器をすべて出し終える頃には管楽器の人たちも準備を終え、それぞれ割り当てられた教室へと去っていってしまう。パーカスだけが残って静かになった音楽室に、今度はメトロノームとスティックが机を叩く音が響く。準備が終わったらすぐに基礎練習。これもまたいつも通りだ。開け放った窓からは、管楽器が基礎練習している音が聞こえる。
基礎練習を終えたら今度は個人練習。奏斗と律が楽器のところへ移動したのを確認して、和希は小物台のところへ移動する。今練習しているのはポップスが中心で、曲によって楽器の担当が違うので先輩たちが移動してから動くようにしている。後輩の自分が、先輩の練習したい楽器をやるのは申し訳ないから。
「天気いいから、今日は外で練習してくんね」
律が練習しているシロフォンが軽やかに鳴り響く中、奏斗はまた仁王立ちで空を眺めているなと和希が思っていたら、不意にそんなことを言い出した。
「いってらっしゃーい」
「おー、いってらっさーい」
「外……? 外で練習してくるって……?」
律と
「ほら、今日は天気がいいから」
「まあそうですけど……外で練習とかよくやるんですか……?」
「うん。よく、でもないけどたまに。管の人たちもやってるよ。ほら、うちの周りほとんど自然でしょ?」
「あぁ、はい」
調辺高は自然に囲まれた学校で、山の中にあるというわけではないが、近くに民家はなかった。そのおかげで外で音を出しても苦情が来るかもといった心配をする必要はない。
そういわれれば奏斗だけじゃなく、管楽器の人たちもたまにベランダなどに出て吹いている姿を何度か見かけたことはあった。律に言われて納得する。
「合わせる時間になっても来なかったら電話してー」
「分かった。ちゃんと出てね?」
「出なかったら勝手にやってるからね」
「ごめんごめん。気を付けます」
時間を忘れて自分が決めたパート練習の時間になっても戻って来ず、携帯を鳴らしても練習に夢中で出ないということが今までに何度かあった。練習熱心なのは見習いたいところだが、パートリーダーなのだからもう少ししっかりしてほしい。
「んじゃ、行ってきまーす」
「頑張ってねー」
一度スネアを運んだ後、譜面台と楽譜を取りに戻ってきて今度こそ奏斗は行ってしまった。ドアが閉じられると再びシロフォンの音色が軽やかに鳴り出す。
外で練習する、といってもどこでするのだろう。音楽室のあるここは三階、いくらスネアひとつとはいえ一階に下りるのは面倒な気もするし――考えても分かることではないので、和希はふぅと小さく息をついてトライアングルを顔の前に構える。
少ししてどこからか聞こえてきたスネアの音に顔を上げると、ちょうどワンフレーズを叩き終えた律と目が合った。
「美術室のベランダだよ」
一瞬で和希の思考を読み取ったのか、目が合った律は小さく笑ってそう言った。
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