龍神池

桜雪

序章 1984年 夏

『田舎町』そんな表現がしっくりとくる町。

 そんな町にある小さな神社、大きな池があり『龍神池』と呼ばれている。

 平安時代に龍が住んでいたそうだ。

 その龍を平家の武者が討ち取り、首を跳ねて都へ運んだのだが、村人はとくに悪さをするわけでもなかった龍を憐れんで、供養塔を建て竜の亡骸を丁寧に埋葬した。

 いつしか神社が建ち、その池を『龍神池』と呼ぶようになったという。


 1984年 夏 静かな田舎町で不可解な事件が起きた。

 いや……事件かどうかすらも解らない…30年経った今でもだ。


 当時の神主 さかき 昭三しょうぞう(38歳)が龍神池に浮かぶ女性の水死体を発見、通報する。

 身元はすぐに解った。

 倉部くらべ 恵子けいこ(失踪当時26歳)

 それは20年前に事故死した女性、死因は溺死。

 死亡推定時刻2時間前。

 46歳とは思えないほど若々しい外見。

 それ以上に不可思議だったのは…事故現場、アメリカ、ニューヨーク州ナイアガラの滝。

 記念撮影中、滝へ落下、死体は上がらなかった。

 複数の目撃証言があり、倉部くらべ 恵子けいこの落下は間違いのない事実。


 その死体が、20年経った日本の田舎町で当時のまま発見されたのだ。

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