34 冬の怪談・ちょっと出てくる⑤

【冬の怪談】


 深夜二時、丑三つ時です。

 ショリショリ、ショリショリ……。

 五月先生、怪しげな音に気づきました。

「な、何の音?」

 

 ショリショリ、ショリショリ……。

「こんな変な音、今までに聞いたことない……」


 ピチョン、ピチョン……。

 ショリショリ、ショリショリ……。

「こ、怖い。メイドぉー!」

 五月先生、布団にくるまったまま叫びます。


「何でございますか? こんな夜中に」

「ひょ、ひょえー、包丁持った山姥!」

 五月先生、失神寸前です。


「失礼でございますね」

「あ、メイド……」

 山姥の正体はメイドさんです。


「年末年始で酷使したので、研いでいただけです」

「そういうのは、昼間のうちにやって……」

「うふ、怖がりさんですね」

「・・・」

 五月先生涙目です。




【ちょっと出てくる⑤】


「ちょっと出てくる」

 ほいきた、五月先生のお出かけです。

 メイドさん、どう出るでしょう。


「今日はわたくしもついて行きます!」

 こりゃまたストレートに。


「だめっ」

「五月様ずるいです、ご自分だけ。ワンコちゃんのお散歩でしょ?」

「ち、ばれたか……」

 まあ近所歩いてれば、ばれますよね。


「八百屋のご主人に聞きました」

「ったく、あのおやじ……」

「なぜ内緒にされてたのですか?」

 確かに、ワンコのお散歩は悪いことではないのに。


「うーん、一応仕事だから……」

「どこのワンコちゃんですか?」

「お隣」

 こりゃまたご近所で。


「何でまた、犬のお散歩なんです?」

「だから、今書いてるやつ」

「今書いてる……あっ、チワワ!」

「そういうこと」

 次作の『愛糸はメイド』にはチワワちゃんが出てきます。

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