32 小豆粥・一日二千円

【小豆粥】


 小正月です。

「五月様、今日は小豆粥でございます」

「一月はお粥が多いな」

 七草粥、食べましたよね。


「たった二回ですよ」

「そうか?」

 五月先生、もうボケました?


「ったく、いつまでもお正月気分でございますね」

「へへへ、まぁまぁそう言うな」

 ごまかした。


「健康を願うだけでなく、今度はこれで、邪気を払うのでございますよ」

「ふーん、邪気ねぇー」

「なんでございますか?」

 五月先生、なんだか含みのある言い方ですね。


「お前がいれば、邪気のほうが逃げて行くんじゃないかなぁーと……」

「それ、褒めてるんですか? 茶化してるんですか?」

「んーっとねぇ、両方」


「毎度毎度そのネタ、もう飽きました……」

「ぐっ」

 五月先生、ぐうの音出た。




【一日二千円】


「ヒロシ、帰らなくていいの?」

 ヒロシくん、実はまだ五月家に居候中です。

 メイドさん、ヒロシくんにはタメ口です。


「帰ってもやることないし」

「畑耕さないと」

「まぁな」

 冬場の畑は次の栽培に備えて、土つくりをします。

 するとしないとでは収穫に大きな差が出ます。


「ヒロシくん、カルタでもするかい?」

 五月先生、まだ正月気分が抜けていないようです。


「五月様、そんなことしてないでお仕事なさってください」

「ちょっと息抜き。お前も入っていいぞ」

 お三方、アナログゲームで盛り上がります。


「ヒロシくん、うちはいつも正月みたいなものだから……」

「そんなことございません!」

「……好きなだけ居てくれていいんだよ」

 五月先生、ヒロシくんに気を遣います。


「ホントっすか? じゃあ、本格的に上京しようかな」

「え……居着くの?」

「ダメっすか?」

「一日二千円なら」

「明日帰ります」

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