30 ちょっと出てくる①・成人式

【ちょっと出てくる①】


「ちょっと出てくる」

「五月様、お買い物でございますか?」

「ん? ま、まぁ」

「それならわたくしが……」

「いや、いい。散歩がてら」

 五月先生、どうも歯切れが悪いです。


「お散歩でございますか? 」お外は寒いですよ。

「いいの」

「そうですございますか。では、いってらっしゃいませ」

「ん」

 メイドさん、なんかだかすっきりしません。


 五月先生、普段はめったに履かない靴を引っ張り出しました。

「ジョ、ジョギングシューズでですか?」

「う、うん」

「いったいどちらへ行かれるのですか?」

 メイドさん、追求します。


「いいの!」

「ジムにでも通い始めるのですか?」

 メイドさん、食い下がります。


「ねえメイド」

「はい?」

「ほっといて……」

「へ‥‥」

 メイドさん、萎えました。


「行ってくる」

「お、お気をつけて……」




【成人式】


 今日は成人式です。

「五月様、きれいなお着物の方がいっぱいです」

「もう成人式なのか?」

 五月先生、ハッピーマンデーになってから随分経ちますよ。


「はい。皆様式典に行かれるのですね」

 記念品がいただけます。


「五月様も式に参列されましたか?」

「ああ、遊園地でだった」

 千葉方面でもそういう地域ありますよね。


「じゃあ乗り物乗り放題ですね?」

「ああ、そうだったな」

「いいですねぇ、乗り放題」

 テレビのニュースでも流れることありますね。


「別に私はジェットコースターとか乗ってないから」

「そんな、もったいない」

「もしかしてお前、ジェットコースター好き?」

「あい」

 それは意外です。


「へー。ところで、身長制限大丈夫なの?」

「大丈夫です!」

 ギリですけどね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る