睦月

27 賀正・書き初め

【賀正】


 明けましておめでとうございます。

 旧年中は大変お世話になりました。


「五月様、わたくしたちもご挨拶、ご挨拶」

「ん、ああ」

 新年早々、なんとも締まらないおふたりです。


「本年も五月とメイドをよろしくお願い申し上げます」

「2017年、皆様にとって良い一年になりますように! の念」

 え、新年早々それやります?


「ンンン〜〜〜、バッ!」

「ンンン〜〜〜、バッ! ヒロシもよろしく」

 え、ヒロシくんいたの?


「お、ヒロシくん。一緒におせち食べよう」

「はい先生。めいと、よろしくな」

 すっかり五月家に馴染むヒロシくんです。


「ヒロシめ……よろしくしない」

 メイドさん、新年早々むくれないで。




【書き初め】


 スリスリ、スリスリ……。

 スリスリ、スリスリ……。

 五月先生、硯で墨を擦っています。


「メイド、書き初め始めるぞ」

「あ〜い」

 皆さんも書いてみてください。

 気持ちが引き締まりますよ。


「今年のお題は四字熟語だぞ」

「五月様、何をお書きになるのですか?」

「一年の抱負みたいのがいいよな?」


 書き初めは吉書きっしょ初硯はつすずりとも呼ばれています。

 宮中で行われていたおめでたい詩歌を書いていた儀式が由来だそうですよ。

 一般庶民には、字の上達を願うものとして広まったようです。


「よし、温故知新。良い作品を書くためにも知識を増やさなきゃな。お前は?」

「いっそう五月様のお役に立てるように、以心伝心です。つーと言えばかー、です」

 五月先生もメイドさんも、おふたりらしい言葉を選びましたね。


「いや、適当にほっといてほしい」

「あ……」

 メイドさん、墨垂らしました。

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