準備を終えた私は、作業のこつを掴むために、目的の情報を探し始めた。

まず、自分がよく知っている、あの人のこれまでの物語。

途中までは真人自身が書いていたものが見付かった。それに続くところから。

あの人の選択、その理由を知りたい。


この物語が終われば、他の世界のあの人の物語を。

あるいは何者かが目撃したあの人の物語を。


一つ一つは無と有の0から1への煌めきに過ぎないのだとしても。

それでも、その無と有の揺らぎには意味がある。


意味に理由を求める必要なんて、ないのだと私は思う。

無と有から無限は生み出される。その無限にすでに答えはある。

意味は求めるものではなく、そこに物語が生まれるという事実のことではないだろうか。


意味は、物語そのものにある。

そう思うのだ。


遠い世界のどこかで記される、あの人が紡いだ軌跡を。

人間が生きる意味。

世界が生み出された意味。

愛が持っている意味。

それを知るために、物語を紡ぎ、世界をまたぎ、アガルタに抗おうとする真人の無限の道を。


わずかでもその軌跡を見付ければ、それがどんなに遠い世界のことであろうと。

私は辿る。


真人がすべてを見渡すというのなら、自分の軌跡にいつか気付いてくれるように。


どこかの世界で憎まれ悪と罵られたとしても。誰にも愛されずただ一人傷付き無限に彷徨うことがあるのだとしても。あるいは誰かに出逢い救われここに戻ってくることなどないのだとしても。この世界を創造したものを見い出しどこか永遠より遠いところへ行くのだとしても。


それでも。


あなたを知っている人はここにいる。

あなたと私は確かに他のどこでもないこの世界で出逢った。

その奇跡の証を。


私がかつて数奇な運命から愛することになり、そして永遠に愛し続ける人の物語を、ここに残す。

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