第3話 ずるいにゃん
鰍: +プレアデス+は今ラブラブの彼氏がいるから紹介はできないにゃん
Kei: だとしても、きっと会えば彼女も俺の事を気に入ると思うんだ。
これが俺のフェイスブック
送られてきたURLから飛んだフェイスブックを見ると、どうやら啓介は名門国立大学に現役合格して、大学生活をエンジョイしているらしいにゃん。
服や髪型も、随分とおしゃれになって、中学高校時代は地味だったのがイケメン風になってたにゃん。
ちょっとダサかった眼鏡も、なんかおしゃれな眼鏡に変わってたにゃん。
いわゆる、大学デビューというやつだにゃん。
大学で急にモテだして、自分ならもっと美人と付き合えるはず、とか思っちゃったのかにゃ?
だとして、それで目を付けた相手が+プレアデス+というのも、なんとも残念な話にゃん。
それとも、中学時代の知り合いの友達なら、連絡すれば紹介してもらえるとでも思ったのかにゃ?
まあ、+プレアデス+は鰍から見ても可愛いから仕方ないにゃん。
どっちにしても、将晴は鰍の恋人だから、紹介する気も全くないけどにゃ。
とりあえず、鰍は啓介に全く希望が無い事をすっぱりと伝える事にしたにゃん。
鰍: どうしてこの程度のスペックで+プレアデス+に気に入られると思ったのかわからないにゃん。
+プレアデス+はものすごい面食いだから、啓介だと厳しいにゃん
Kei: かすみ、お前の気持ちは良くわかったよ。
俺が他の女の事を好きになるのが嫌なんだろ?
お前の気持ちに答える事はできないけど、わかった。お前には頼らないよ。
辛い思いさせてゴメンな。
……こいつは一体、何を言っているのかにゃん?
メッセージが来た時からおかしいとは思ってたけど、啓介、完全に調子に乗ってるにゃん。
嫌な予感がした鰍は、早速将晴にラインで最近SNSで変な奴に絡まれてないか尋ねてみたにゃん。
そしたら、
「変な奴に絡まれるのはしょっちゅうだし、基本無視して、あんまり酷い時はブロックしてる」
という回答が返ってきたにゃん。
最近フェイスブックのアドレスを送りつけてきた大学生とかその中にいなかったかと尋ねれば、その手の人間は多いのでいちいち覚えていないと言われたにゃん。
確かに鰍もネット上ではよくそういう人に絡まれるからわからないでもないけれど、将晴は時々ナンパのあしらい方とか、セクハラっぽい質問の流し方とか、妙に小慣れてる時があるにゃん。
さすが、しょっちゅう男に言い寄られてるにゃん。
そうなるとネット上では大丈夫そうだけど、問題は啓介が将晴に会いに来たりしないかだにゃん。
最近は色々と忙しくてコスプレイベントにも参加できていないらしいし、このまま何も無い事を祈るにゃん。
……と、ついさっきまで鰍は思ってたにゃん。
なんで過去形なのかと言えば、今、目の前に啓介が鰍の古くからの友人として懐かしそうに道端で声かけてきて、隣の女装した姿の将晴、すばるをチラチラ見てるからだにゃん。
ダイレクトメールを送ってきて一週間もしないうちにリアルアタックしてくるとはたまげたにゃん。
まあ、元々プレかじの収録日時は公開されているし、偶然を装ってるけど、テレビ局の関係者入り口の前で出待ちしてたのバレバレだにゃん。
「この人、鰍の知り合い?」
久しぶりだとか、鰍の事応援してるとか、自分の近況報告とか話してくる啓介の話に応じていると、隣からニコニコとすばるが聞いてきたにゃん。
「中学時代、鰍の親衛隊隊長をしてた、西浦啓介だにゃん。啓介、こちら鰍の親友の+プレアデス+だにゃん」
「どうも、かすみがお世話になってます」
悪意を込めて鰍が啓介をすばるに紹介したら、したり顔で啓介がすばるに挨拶したにゃん。
「うふふ、むしろ私の方がかすみにはお世話されてばっかりで」
すばるが鰍の腕にしなだれかかって言うにゃん。
……もしかして、すばるなりに啓介をけん制してるつもりなのかにゃん?
「そうなんですか。かすみがあの+プレアデス+さんと親友だなんて、中学時代の親友として、なんだか嬉しくなってしまいます」
中学時代、それなりに親しくはあったけど、まさか親友認定されてたとは驚きにゃん。
「あら、かすみは渡しませんよ?」
対してすばるはにこやかに答えてるけど、目が笑ってないにゃん。
「せっかくだから、よければ三人でお茶でもしませんか?」
「ごめんなさい。私達これから約束があるので……あらもうこんな時間。それでは西浦さん、失礼しますね」
何とか食い下がろうとする啓介の申し出を、笑顔ではあっさりとすばるは断ったにゃん。
その後、スマホで時間を確認する素振りを見せた後、流れるような所作で鰍の手を引いて歩き出したにゃん。
その後すばるとはしばらくお互い無言で手を繋いで歩いていたけれど、途中で繋いでた左手に力が込められて、すばるの顔を見上げれば、拗ねたような顔をしてたにゃん。
「……妬いたかにゃん?」
「…………うん」
期待を込めて尋ねてみれば、少しの沈黙の後、思いの外素直な返事が返ってきて、ちょっとびっくりしたにゃん。
「……嫉妬とかそういうの、かっこ悪いよね……嫌いになった?」
黒目がちな大きな目が、不安そうに鰍を覗き込んできて、胸の奥がきゅうって締め付けられるにゃん。
この可愛い顔も、さらさらの長い髪も、全部作り物だってわかってるにゃん。
繋いでる手は細いけど大きくて、少し堅くて、やっぱり男なんだなって実感するにゃん。
なのに、やっぱり目の前のすばるは可愛くて、なんだか良い匂いがして、ずるいにゃん。
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